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人とのつながりが失われると、なぜこんなにつらい? 「社会的痛み」が教えてくれること

人とのつながりが失われると、なぜこんなにつらい? 「社会的痛み」が教えてくれること

「自分だけ誘われなかった」

「大切な人との関係が終わった」

「信頼していた相手に裏切られた」
そんな出来事のあと、何度もその場面を思い返したり、胸が重く感じたり、人に会うことが怖くなったりすることがあります。

心理学では、拒絶や孤立、別れなど、人とのつながりが脅かされたときに生じる苦痛を「社会的痛み(social pain)」と呼ぶことがあります。今回は、この社会的痛みがなぜ起こるのか、そして、つらい気持ちとどのように付き合っていけばよいのかを考えていきます。

社会的痛みとは?

社会的痛みは、人から拒絶されたり、仲間から外されたり、大切な関係を失ったりしたときに生じる苦痛のことです。友人から返事が来ない、職場で自分だけ話に入れない、大切な人との関係がうまくいかない。こうした身近な出来事でも起こります。

なぜ、人とのつながりが失われるとつらいのでしょうか。私たちは、家族や友人、学校、職場など、さまざまな人とのつながりの中で生活しています。そのため、人との関係が失われたり、自分が拒まれたと感じたりすることは、私たちにとって大きな出来事です。

研究では、こうした社会的な拒絶や孤立による苦痛は、身体的な痛みと似たかたちで一部が処理されることが示されています。もちろん、社会的痛みと身体的痛みがまったく同じというわけではありません。しかし、どちらも「自分にとって無視できないことが起きている」と知らせる、重要な情報として扱われる点では共通しています。

たとえば、けがをしたときの痛みは、「これ以上無理をしない方がよい」「傷ついた部分を守った方がよい」と私たちに知らせます。それと同じように、社会的痛みも、「大切な関係が脅かされている」「自分の居場所について何か対応が必要かもしれない」と知らせてくれる重要な手がかりなのです。

では、どのようにしたら社会的痛みやそれによるつらい気持ちと上手に付き合っていけるのでしょうか。

つらい気持ちの中身を整理する

社会的痛みを感じると、「とにかくつらい」「もう考えたくない」と思うことがあります。そんなときは、不安や寂しさを早くなくそうとしたり、嫌な出来事を考えないようにしたりしたくなるかもしれません。

しかし、「考えないようにしよう」「こんなふうに感じてはいけない」と強く意識すると、かえって出来事や自分の反応に注意が向き続けることがあります。その結果、忘れようとしているのに何度も思い出したり、感情を抑えようとしているのに、つらい気持ちがなかなか消えてくれなかったりすることもあります。

そんなときは、気持ちを無理になくそうとする前に、自分の中にどのような感情や考えがあるのかに気づいてみましょう。たとえば、友人から返事が来ないときに、「嫌われたのかもしれない」という考えが浮かび、不安や寂しさを感じているとします。その場合は、「今は寂しいんだな」「自分は『嫌われたのかもしれない』と考えているんだな」と、気づいたことを短い言葉にしてみます。

ここで、なぜそう感じるのかを詳しく分析したり、その考えが正しいかどうかを急いで判断したりする必要はありません。「こんなことで寂しくなるのはおかしい」と、自分の反応を責める必要もありません。まずは、「今の自分には、このような感情や考えがある」と認めることから始めてみましょう。

また、気持ちを受け止めることは、相手の言動を認めたり、害のある状況を我慢したりすることではありません。

たとえば、職場で同僚が「あの人に関わるとろくなことがない」と陰口を言うのを耳にしたとします。明確に拒絶する言葉を向けられたのであれば、「悲しい」「腹が立つ」「次関わるのが怖い」と感じるのは無理もないことです。そんなときは、「気にしてはいけない」と押し込めるのではなく、「自分は傷ついたんだな」「不当な扱いを受けて腹が立っているんだな」と、自分の反応をそのまま受け止めてみましょう。

これは、相手を許すことではなく、「自分が傷つけられた事実」をしっかりと認めるということです。

気持ちに気づいて受け止める


自分の傷つきを認めたうえで、次に行うのが「感情や思考と上手に距離を置く」ステップです。 気持ちが強く揺れているときには、ただ「気づく」だけでは受け止めるのが難しいこともあります。つらい感情や考えを無理に排除せず、優しく受け止めて少し余裕を取り戻すための具体的な方法をご紹介します。

感情や思考に「名前」をつけて眺める


心の中で「あ、『寂しささん』がやってきたな」「『嫌われたという考え』が浮かんでいるな」と名前をつけ、まるで目の前にある物体やキャラクターのように少し離れた場所からただ眺めてみます。感情と自分自身との間に隙間(スペース)を作るイメージです。浮かんだ考えにひと言付け加えてみる

「嫌われたに違いない」という考えが浮かんだら、「私は今、『嫌われたに違いない』と考えているんだな」と言い換えてみます。その考えが良いか悪いかを判断せず、「今そう考えている自分」を客観的に認識することで、思考に飲み込まれにくくなります。

紙やスマートフォンのメモに書き出してみる

「実際に起きたこと」「浮かんだ考え」「感じた感情」を分けて書いてみます。たとえば「返事が来ていない(事実)」「嫌われたと思った(考え)」「不安や寂しさ(感情)」と整理することで、抱えている悩みから距離を取りやすくなります。

別の活動に注意を向ける・しっかり休む

散歩や音楽、家事など、無理なく取り組める活動をして頭の中のループから一度離れてみましょう。また、睡眠不足は感情にも影響するため、十分な休息をとることも気持ちを受け止める大切な土台となります。

つらい感情や思考は、消し去ろうとするほど大きくなることがあります。「感情をペットのように連れて歩く」ような感覚で、今の自分に合った方法を試しながら、少しずつ心に余裕をつくっていきましょう。


一人では整理しにくいときには

つらい気持ちが長く続いている、同じ考えが何度も頭に浮かぶ、人との関わりを避けるようになった、眠れない、仕事や学校に影響が出ている。そんなときには、心理師などの専門家と一緒に整理してみる方法があります。

当センターでは、認知行動療法に基づいたカウンセリングや集団プログラムを行っています。認知行動療法は、単に「ネガティブな考えをポジティブに変える」方法ではありません。今困っている場面を取り上げ、そこでどのような考えが浮かび、どのような感情が起こり、そのあとどのような行動をしているのかを一緒に整理します。そのうえで、ものの見方を少し広げたり、いつもとは違う行動を試したりしながら、生活の中で使える対処法を探していきます。

カウンセリングは「もっとつらくなってから」でなくてもよい

「まだ自分で何とかできるから、相談するほどではない」
「もっとひどくなってから相談すればいい」
そのように考える方も少なくありません。しかし、カウンセリングは、自分では何もできなくなったときだけに利用するものではありません。

気持ちを整理する、別の活動をする、休息をとるといったセルフケアを続けながら、一人では整理しにくい部分を心理師と一緒に考えることもできます。当センターでは、初回カウンセリングを無料で行っています。「誰かに相談してみたい」「つらい気持ちを話してみたい」と思われたときに、ぜひご検討いただければと思います。

社会的痛みを感じたときは

拒絶や別れのあとに生じるつらさは、弱さや気にしすぎの証ではありません。それだけ人とのつながりが自分にとって大切だったことを表す、自然な反応の一つです。

つらい気持ちを無理になくそうとせず、まずは自分の中にある感情や考えに気づいてみましょう。書き出す、別の活動に注意を向ける、ゆっくり休むなど、そのときにできそうな方法を一つ選ぶだけでも構いません。

つらさが長く続いているときや、生活に影響が出ているときには、一人で抱え込まず、心理師や相談機関の力を借りることもできます。今の自分に合う方法や支えを選びながら、少しずつ生活の余裕を取り戻していきましょう。

引用元・参考文献

  1. こころと体のセルフケア|こころもメンテしよう(厚生労働省)
    https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/stress/self/index.html
  2. Eisenberger, N. I., Lieberman, M. D., & Williams, K. D. (2003). Does rejection hurt? An fMRI study of social exclusion. Science (New York, N.Y.), 302(5643), 290–292.
    https://www.science.org/doi/10.1126/science.1089134
  3. Palmer, C. A., Bower, J. L., Cho, K. W., Clementi, M. A., Lau, S., Oosterhoff, B., & Alfano, C. A. (2024). Sleep loss and emotion: A systematic review and meta-analysis of over 50 years of experimental research. Psychological Bulletin, 150(4), 440–463.
    https://psycnet.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fbul0000410

コラムのご利用にあたって

当サイトのコラムは、こころの不調や働き方に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療方針を示すものではありません。

ここケアセンターは医療機関ではないため、診断や薬の処方は行っていません。強い落ち込み、不眠、食欲低下、希死念慮、自傷の不安、仕事や生活への大きな支障が続く場合には、主治医や心療内科・精神科などの医療機関にご相談ください。

監修者

原井 宏明

原井クリニック院長 / ここケアセンター 顧問医

医師、精神保健指定医、精神科専門医・指導医(日本精神神経学会認定)、専門行動療法士(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法師(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法スーパーバイザー、認定動機づけ面接トレーナー(MINT認定)

・プロフィール
・原井クリニックHP


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