Columnコラム

身近な人が心の不調を抱えたとき。無理なく寄り添うためのセルフケア

身近な人が心の不調を抱えたとき。無理なく寄り添うためのセルフケア

「最近、ずっと元気がないけど大丈夫かな」
「何かしてあげたいけれど、どうすればいいのだろう」
「本人もつらそうだし、自分がしっかりしないと……」

そんな思いを抱えながら、毎日を過ごしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

大切な家族や友人の元気がないとき、力になりたいと思うのは自然なことです。
しかし、心の不調を抱える人を長期に支えることはエネルギーを必要とします。
気がつかないうちに、自分自身の心もすり減ってしまうケースは少なくありません。

だからこそ大切なのが、相手のことだけでなく、自分自身の心にも目を向けることです。
この記事では、身近な人が心の不調を抱えたときに、無理なく寄り添っていくための考え方やセルフケアについて、公認心理師がやさしく解説します。

なぜサポート側のセルフケアも大切なのか

心の不調を抱えた人が身近にいると、

「自分がもっとしっかりしなければ」
「自分が何とかしてあげないと」
「本人がつらいのに、自分だけ楽しんではいけない」

と考えてしまうことがあります。
こうした考えは、大切な人を思う気持ちから生まれるものです。
ただ、その考えが強くなりすぎると、自分の生活まで少しずつ変わっていくことがあります。

たとえば、

「今日は本人の調子が悪そうだから、予定をキャンセルしよう」
「もっと話を聞く時間をつくろう」
「ちゃんと食べているか、何度も確認しよう」

といった行動です。

しかし、このような自分の仕事や趣味を我慢し、生活のすべてを相手のケアに注ぎ込む自己犠牲だけで成り立つサポートは長続きしないことが多いです。

心の不調を抱える方のケアは長期戦になることが一般的です。専門家である医師や心理師であっても、チームを組んで複数人で役割を分担しながらサポートを行います。

だからこそ、「自分が我慢すればいい」と自分の気持ちを後回しにし続けると、いつか限界が訪れてしまいます。
こうした状態が続くと、抑え込んだ怒りや不満が不意に爆発し、相手にきつい言葉をぶつけてしまうことがあります。結果的にお互いの関係を悪化させ、罪悪感を生む悪循環に陥ってしまうこともあるのです。

自分の生活を守ることは、決して冷たいことではありません。
無理をせず、自分の心身に余裕を残しておくことも、長く寄り添っていくために大切なことなのです。

無理なく寄り添うためにできること

自分の状態を整理してみる

当センターでも取り入れている認知行動療法という考え方では、生活の中で起きている具体的な出来事について、状況、考え方、気持ち、行動などのつながりに注目します。
たとえば、身近な人が一日中部屋にこもっていたとしましょう。
そのとき、「このままで大丈夫なのかな」「私が何とかしなければ」と考えることで不安や焦りが強くなり、次のような循環が起こることがあります。

何度も声をかけるものの、相手から「今は放っておいて」と言われる。
 ↓
「自分の関わり方が悪かったのかな」と落ち込む。
 ↓
相手の様子が気になり、何かしてあげようとする。

このように、出来事、考え方、気持ち、行動が影響し合いながら、負担が続いていくことがあります。

ここで大切なのは、「自分の考え方が間違っている」と考えることではありません。

「自分を追い詰める考え方になっていないかな」
と、一度立ち止まって眺めてみることです。
相手のために何かをする前に、自分の心の状態にも目を向けてみましょう。

「自分にできること」と「自分では決められないこと」を分ける

「自分がもっと頑張れば、相手は元気になるのではないか」

そんなふうに思うこともあるかもしれません。
しかし、相手がいつ回復するのか、どのような気持ちになるのかを、自分だけでコントロールすることはできません。

そこで、一度、「自分にできること」「自分には決められないこと」に分けて考えてみましょう。
たとえば、「話を聞く」「必要なものを用意する」といったことは、自分にできることかもしれません。
一方で、「相手の気分をいつも安定させる」「相手の回復を早める」といったことは、自分一人で決められることではありません。
相手の回復まで、自分の責任にする必要はないのです。

では、日常生活の中ではどのように関わっていくのがよいでしょうか。
次は、接し方のポイントと、サポーター自身のセルフケアの実践例をご紹介します。

何かをさせることよりも見守ること

相手の元気がないと、

「朝はちゃんと起きたほうがいいよ」
「気分転換に旅行に行こう」

など、何かを提案したくなるかもしれません。
もちろん、元気になってほしいという気持ちから出てくる言葉です。

ただ、不調になり始めた段階では、本人のエネルギーが枯渇している状態です。このような場合、残り少ないエネルギーをさらに絞り出させることになり、逆効果になるといわれています。
そのため、相手の状態によっては、何かを促すよりも、休める環境をつくることが大切な場合があります。

また、相手の生活リズムが乱れているからといって、身近にいる人まで相手のペースに合わせる必要はありません。
自分には仕事や学校、家事など、自分の生活があります。
「何かしてあげなければ」と頑張り続けるよりも、必要なときに手を差し伸べられる余力を残しておくことが、長く寄り添うためには大切です。

勝手に予測しない

良かれと思って先回りして想像し、過干渉になってしまうと、本人は罪悪感を募らせたり、息苦しさを感じたりすることがあります。

では、実際にはどのように関わればよいのでしょうか。
すれ違いを防ぐためには、シンプルな対話が効果的です。勝手に相手の欲しいものを予測して動くのではなく、

「何かしておいてほしいことはある?」

このように、短く聞いてみることが大切です。
相手の希望を聞くことで、「よかれと思ってしていること」と「相手が本当に望んでいること」のすれ違いを減らすことができます。

もし「今は放っておいて」と言われたら、「今はそっとしておいてほしいんだな」と受け止めてみましょう。相手の言葉には、心身の不調による影響が表れていることもあります。だからこそ、その言葉を真に受けて傷つきすぎるのではなく、相手の希望として、そのまま受け止めることも大切です。

たとえば、「最近、食事量が減っている」「夜眠れていないように見える」「本人が『今は話したくない』と言った」は、比較的確認しやすい事実です。
一方で、「このまま悪くなるのではないか」「自分の対応が間違っていたのではないか」「ネットで読んだ症状に当てはまるのではないか」は、心配や推測、外から得た情報です。
どちらも大切な手がかりですが、同じものとして扱うと不安が大きくなり、先回りした対応につながりやすくなります。まずは、見えている事実、自分の心配、他人から聞いた話やネット情報を分けて書き出してみると、次に必要な行動を考えやすくなります。
何かしてあげたいけれど、何をしたらいいかわからない。
そんなときこそ、憶測したり、ネットで調べたりするのを止めて、本人に聞いてみることから始めてみましょう。

自分のサインに気づき、意識的に離れる

相手のことを気にかけていると、自分が疲れていることに気づきにくくなることがあります。
そんなときは、最近の自分の生活を振り返ってみましょう。
食べる(過食や食欲不振)、寝る(睡眠の乱れ)、遊ぶ(趣味が億劫になる)の3つの場面に変化はないでしょうか。
こうした変化が重なっている場合、自分自身にも休息が必要な可能性があります。

疲れを感じたときには、相手と物理的に離れる時間をつくることも大切です。
たとえば、気にかける時間を区切ることも一つの方法です。夜9時以降は、相手のことを考えたり、対応したりする時間をいったん終え、プライベートタイムとしてみましょう。

身体を休める

心の疲れが身体症状となって表れるほどの段階になっている場合、好きな映画の鑑賞や音楽を聞いたりするだけでは気分転換にならないこともあります。このような場合、わかりやすく身体的な癒しを求めたほうが現実的で効果的といわれています。たとえば、マッサージなど、心より先に身体から癒してあげると、心の癒しにもつながっていきます。

自分のための時間をつくる

身体的な休息とは別に、筋トレや資格勉強など、成果や変化を感じやすい自分のための取り組みを持つことも、実は大切なセルフケアの一つです。
これらは一見すると自分を追い込むように思えるかもしれませんが、いつ終わるかわからないサポート生活の中で自分の時間を取り戻すという役割を持っています。自分のペースで取り組むことで、自分の時間や、生活を意識するきっかけになるかもしれません。

一人で抱え込まず、まずは相談してみませんか?

身近な人を見守る中では、イライラしたり、悲しくなったり、疲れを感じたりすることもあります。
そうした気持ちを抱くこと自体を責める必要はありません。
大切なのは、その気持ちを一人で抱え込まないことです。

「相手のことを大切に思っているのに、イライラしてしまう」
「こんなことで相談するのは大げさかもしれない」
「自分のことなのだから、自分でなんとかしなければ」

そんなふうに感じて、相談することをためらっている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、家族や身近な人を支える側が孤立しないことも大切です。医療機関や公的な相談窓口に加えて、家族会や自助グループなどで、同じような立場の人の経験を聞くことが助けになる場合もあります。

また、カウンセリングを通して自分の気持ちや状況を整理してみる方法もあります。

カウンセリングでは、たとえば次のようなことを一緒に整理できます。

  • 「自分が何とかしなければ」という考え方を見直す
  • 自分の生活を守りながらできる関わり方を考える

身近な人の心の不調に向き合うことは、決して簡単なことではありません。
自分の生活や心の余裕を守りながら、できる範囲で寄り添っていく。
それも、身近な人との関係を大切にする一つの方法です。

当センターでは、初回カウンセリングを無料で実施しています。

「これくらいで相談していいのかな」と迷うときも、無理に答えを出す必要はありません。初回無料カウンセリングでは、まず現在の状況やお悩みを心理師にお話ししていただきながら、一緒に整理していきます。

「カウンセリングを受けるかどうかまだ決めていない」という方も、まずはご自身の困りごとを整理するための機会としてご利用いただけます。

身近な人を大切に思うからこそ、自分自身のことも大切にしてみませんか。

参考文献

  1. 井上 智介(2025).どうする?家族のメンタル不調 株式会社 集英社
  2. 厚生労働省.ご家族にできること 働く人のメンタルヘルス·ポータルサイト「こころの耳」 Retrieved August27, 2026, from https://kokoro.mhlw.go.jp/families/
  3. 厚生労働省.うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料). Retrieved August27, 2026, from https://jact.jp/pdf/cognitive_patient.pdf

コラムのご利用にあたって

当サイトのコラムは、こころの不調や働き方に関する一般的な情報提供を目的としています。個別の診断や治療方針を示すものではありません。

ここケアセンターは医療機関ではないため、診断や薬の処方は行っていません。強い落ち込み、不眠、食欲低下、希死念慮、自傷の不安、仕事や生活への大きな支障が続く場合には、主治医や心療内科・精神科などの医療機関にご相談ください。

監修者

原井 宏明

原井クリニック院長 / ここケアセンター 顧問医

医師、精神保健指定医、精神科専門医・指導医(日本精神神経学会認定)、専門行動療法士(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法師(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法スーパーバイザー、認定動機づけ面接トレーナー(MINT認定)

・プロフィール
・原井クリニックHP


関連記事

ページのトップへ