「生活訓練という言葉は聞いたことがあるけど、実際に何をするのかよくわからない」「自分の悩みに合ったプログラムがあるかどうか不安」
そう感じている方は少なくありません。
うつ病や適応反応症(適応障害)、神経発達症(発達障害)などで休職・離職した方が復職や再就職を目指すとき、「まず自分の心と生活を立て直したい」と思うのはごく自然なことです。今回は、生活訓練プログラムの制度概要から一日の流れ、代表的なプログラム内容までご説明します。
生活訓練(自立訓練)とはどんな制度?
生活訓練(自立訓練・生活訓練)は、障害者総合支援法に基づく福祉サービスのひとつです。日常生活能力や社会活動能力を高め、生活の安定と社会参加を目指すことを目的としており、利用期間は原則2年間です。所得に応じた負担上限月額が設定されるため、生活保護世帯や住民税非課税世帯では自己負担なしで利用できます。
就労移行支援が「就職すること」を直接の目標にするのに対し、生活訓練は体調管理・コミュニケーション・生活リズムの安定など、働く前の土台を整える場所です。
一般的な生活訓練プログラムとはどんな内容?
事業所によって内容は大きく異なりますが、一般的には食事・金銭管理・身だしなみといった生活スキル、スポーツやリラクゼーションなどの体調管理、グループミーティングやSSTを通じた対人スキル、音楽・調理・外出行事といったレクリエーションなど、日常生活全般にわたる幅広い内容が提供されています。
通所そのものが「決まった時間に外に出る」という生活リズムの訓練になる点も、回復初期において大きな意味を持ちます。国立障害者リハビリテーションセンターのガイドラインでも、週1回から週5回へと段階的に通所を増やしながらリズムを確立していく方法が推奨されています。
「心の回復」に特化した生活訓練もある
生活訓練の中でも、事業所によってアプローチはさまざまです。料理や金銭管理などの生活スキルを中心に据える事業所もあれば、心理療法を軸に「なぜ不調になったのか」「再発を防ぐには」を掘り下げることに重点を置く事業所もあります。
ここケアセンターの生活訓練プログラム(回復・再発予防プログラム)は後者です。公認心理師が中心となり、認知行動療法(CBT)をはじめとした科学的根拠のある心理療法プログラムを構造化されたスケジュールで提供しています。個別支援では「活動記録表」を使いながら、心理師と一緒に生活リズムの安定から現在抱えている問題まで丁寧に扱っていきます。
ここケアセンターの一日の流れ
プログラムは月曜〜金曜の10時から16時を基本として進んでいきます。
午前中は、写真や身の回りのできごとを共有する「フォト発表」や「マイブーム共有」「良かったこと共有」といった、気軽に話せる時間からスタートします。最初から重たいテーマを扱うのではなく、「自分のことを少し話してみる」という小さな一歩から始められます。その後、マインドフルネスや集団認知行動療法などのプログラムに移っていきます。
昼休憩を挟んだ午後は、リラクセーションやSST、ACTなどの各プログラムが続きます。一日の終わりにはオフィスワーク(ソロプロジェクト・チームプロジェクト)の時間が設けられており、仕事場面を意識した活動にも取り組みます。卓球のような身体を動かす活動も週に組み込まれていて、メリハリのある一日になっています。
ここケアセンターで提供している主なプログラム
プログラムはお好きなものから参加でき、疾患や状態に応じて推奨される内容も異なります。「自分にはどれが合うか分からない」という方も、心理師と話しながら一緒に決めていけるので安心してください。
「なぜこうなったのか」を整理したい方へ
前の職場で無理をし続けてしまった、気づいたときには限界を超えていた。そんな方がまず取り組むのは、自分の症状や疾患について正しい知識を学ぶことです(精神疾患について知ろう)。「サボっているのではなく、脳や心に負荷がかかっていた」と理解できると、自分を責める気持ちが少しずつ和らいでいきます。元気なときの状態・不調のサイン・崩れたときの対処プランを書き出して「自分の取扱説明書」を作るプログラム(WRAP)では、グループワークで他の参加者と意見を交わしながら進めるので、ひとりでは気づけなかった視点に出会えることも多いです。
「ずっと不安で落ち着かない」という方へ
頭では「大丈夫」と分かっているのに、体が緊張したまま、気持ちが休まらない。そんな方には、過去の後悔や先への不安から少し離れ「今この瞬間」に注意を向けるトレーニング(マインドフルネス)や、筋肉の緊張を和らげ自律神経を整える方法(リラクセーション)、ネガティブな感情とうまく付き合う具体的なスキルを身につけるトレーニング(感情調節訓練)に取り組んでいきます。
「考え方のくせ」を変えたい方へ
「どうせ自分には無理だ」「また失敗するに違いない」、こうした考えがぐるぐると止まらなくなる方には、認知行動療法系のプログラムが助けになります。考えの幅を広げるグループプログラム(集団認知行動療法)、苦しい気持ちを無理に消そうとせず自分の大切にしたいことに沿って動けるようになる方法(ACT)、うつを長引かせる思考のくせに客観的に対処する方法(D-MCT)、不安とうつの両方に働きかけるトレーニング(UP)など、目的に合わせて選べる内容が複数あります。
「人との関わりが怖い」という方へ
前の職場での経験が尾を引いて、人と話すのが怖くなっている方も少なくありません。職場でありがちな場面をロールプレイで繰り返し練習するプログラム(SST・社会生活スキルトレーニング)では、「断れずに仕事を引き受けすぎてしまう」「気持ちをどう伝えればいいか分からない」といった悩みをテーマに、安心できる環境の中で積み重ねていきます。失敗しても大丈夫な場所での練習が、少しずつ自信につながっていきます。
「次に向けて動き出したい」という方へ
回復が進んできたら、復職・再就職に向けた準備も少しずつ始めていきます。行動と気持ちの関係を体験しながら学ぶプログラム(行動活性化)、同じパターンを繰り返す仕組みを理解して職場での過ごし方を探るプログラム(行動のABC)、復職の流れとストレスのメカニズムを学びながら再発予防シートを作るプログラム(復職セミナー)と、段階に合わせた内容が用意されています。「どう復職を進めればいいか分からない」という不安が、具体的な見通しに変わっていきます。
自分に合ったプログラムを見つけるために
生活訓練を選ぶとき、「自分にとって今一番必要な支援は何か」を考えることが大切です。「なぜ不調になったのかを理解したい」「再発しないために心の使い方を変えたい」「職場でのコミュニケーションや感情の調整に課題がある」と感じる方には、心理療法を軸としたプログラムが助けになることがあります。
何が自分に合っているかの判断は、ひとりで考えるより専門家と話しながら整理したほうが、遠回りなく進みやすいです。ここケアセンターでは、生活訓練プログラムについての相談も含め、初回カウンセリングを無料でお受けしています。「どんな支援が自分に合っているか分からない」「生活訓練を使えるのかどうかも分からない」という段階からお気軽にご連絡ください。カウンセリングのみの利用も可能です。
引用元・参考文献
- 生活訓練プログラム|国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター
https://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/how04/life/ - 自立訓練(機能訓練・生活訓練)に係る報酬・基準について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/000670106.pdf


