「カウンセリングを受けたいけど、何を話せばいいのかわからない」 「自分のことをうまく話せる自信がない」 「こんな状態で行っていいのかな」
そんな気持ちを抱えながら、なかなか一歩が踏み出せずにいる方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、特に休職中の方や、仕事がうまく続かなかった経験をお持ちの方に向けて、カウンセリングで実際に何を話すのか、話しにくいときはどうすればいいのかをお伝えします。「うまく話せなくても大丈夫」な理由も含めて、ここケアセンターの心理師の視点からお伝えします。
「うまく話せなくていい」と言える理由
カウンセリングは、整理された言葉を持ち込む場所ではありません。「何を話せばいいかわからない」という状態こそが、今のあなたの正直な姿です。そこから一緒に始めていけます。
特に、うつ病や適応反応症(適応障害)、神経発達症(発達障害)といった特性がある方は、自分の気持ちや状況を言葉にするのが難しいと感じやすいです。頭の中がぼんやりしていたり、気力がわかなかったりして、何から話していいかわからなくなってしまうのは、珍しいことではありません。
また、休職中の方の中には「仕事のことを話すのが怖い」「失敗した経験を振り返りたくない」と感じる方もいます。無理に過去の話をする必要はありません。「今、どんな気分か」「今日どんな一日だったか」という、今この瞬間のことから話し始めてもかまいません。
心理師はそのことをよく理解しています。「なんとなくしんどい」「毎朝起きるのがつらい」といった一言でも、十分なスタートになります。言葉が出ない場面があっても、それ自体があなたの今の状態を教えてくれる大切な情報です。
初回カウンセリングでは何をするの?
初回のカウンセリングは、心理師があなたの今の状況や困りごとを理解するための時間です。ここケアセンターでは、最初に「現状の把握」を行い、その後のカウンセリングで「目標の設定→実践→評価」というサイクルで一緒に進めていきます。
全部に完璧に答えようとしなくて大丈夫です。話せる範囲で、思いつくままに話してもらえれば十分です。
たとえば、今の生活の様子(休職中か、どんな生活リズムか、睡眠や食欲はどうかなど)、カウンセリングに来ようと思ったきっかけ、これからどうなりたいかといった希望について、話せる範囲で教えてもらえれば大丈夫です。
「うまく説明できないけれど、なんとなく限界だった」という言葉も、立派な出発点になります。「どうなりたいか」についても、「まず以前の生活に戻りたい」「自分に合う仕事を見つけたい」といったぼんやりとした希望で十分です。焦らず、思いつくことを話してみてください。
休職中・復職を目指す方が話しやすい内容の例
「何を話したらいいかわからない」という方のために、話しやすい内容の例をいくつか挙げます。自分に当てはまるものがあれば、そこから話し始めてみてください。
前職でうまくいかなかったことについて話す方はとても多いです。「なぜああなってしまったのかが今でもわからない」「また同じことが起きそうで怖い」という気持ちを抱えたまま休んでいる方も少なくありません。原因が整理できていなくても、「職場でしんどかった」という事実だけでも、話し始めることができます。
自分の特性について話したいという方もいます。「マルチタスクが苦手で仕事についていけなかった」「コミュニケーションに不安がある」「朝起きることがどうしてもできない」といった日常的な困りごとは、カウンセリングで一緒に整理できます。これまで受診したことがなくても、「もしかして自分に特性があるかも」という段階からでも話すことができます。
就職・復職への不安を話す方も多くいます。「面接でうまく自己紹介できない」「自分に合う仕事がどんなものかわからない」「また働けるようになる気がしない」という言葉をよく聞きます。こういった不安は一人で抱え込みやすいですが、心理師と話しながら少しずつ整理していくことができます。
日常のちょっとしたことでもかまいません。「今日は外に出られた」「久しぶりに料理をした」「夜眠れなかった」という変化も、立派な話し題材です。小さな変化の中に、あなたの回復のヒントが隠れていることがあります。
話したくないことは話さなくていい、でも「つらい」は伝えていい
カウンセリングで「すべてを話さなければならない」ということはありません。特に初回は、まだ心理師との関係ができていない段階です。話したくないことや、まだ言葉にする準備ができていないことは、「それはまだ話せません」と伝えてもらえれば十分です。
心理師はその気持ちを尊重します。無理に掘り下げることはないので、安心してください。
たとえば、前職でつらい経験をした方が「あのことは今は話したくない」と感じるのは自然なことです。記憶を無理に掘り起こすことがカウンセリングの目的ではありません。今ある苦しさ、今感じている不安、今の生活のことから話していくことで、自然と整理できるタイミングが来ることがあります。
ただ、もし「話すつもりはないけれど、これが一番しんどい部分だ」という感覚があるなら、「詳しくは話せないけれど、これがとてもつらい」と一言添えてもらうだけで、心理師は大切な情報として受け取ることができます。ざっくりとした一言でも、それはあなたの心の地図を描く助けになります。
話した内容が「自分を変えるヒント」になる——認知行動療法のアプローチ
ここケアセンターでは、認知行動療法(CBT)を中心にカウンセリングを進めていきます。認知行動療法は、日常の困りごとを「どう受け取るか(認知)」と「どう行動するか」の両面から整理し、自分でストレスに対処できる力を育てていく心理療法です。
カウンセリングで話すことは、そのまま次のステップにつながっていきます。たとえば「上司に注意されると、もう終わりだと思って黙り込んでしまう」という話であれば、「その受け取り方を少し柔軟にするにはどうすればいいか」「行動を少し変えると何が起きるか」という問いへとつながっていきます。考え方と行動、両方の側面から一緒に取り組んでいくのが認知行動療法の特徴です。
日常のこと、つらかったこと、今日の気分をそのまま話してもらえれば、心理師がその中から整理のポイントを見つけていきます。特別な準備は何も必要ありません。
取り組みを続けていくことで、自分で自分をコントロールできる力が少しずつ育っていきます。話すこと自体が、その積み重ねの一歩です。
迷っている方へ——来てくださること自体が、回復の一歩です。
「うまく話せなかったらどうしよう」という不安は、多くの方が初回に感じることです。でも実際には、「うまく話せなかった」と感じた回ほど、後から振り返ってみると「あの沈黙が大事だった」「あの一言がきっかけだった」ということが多いものです。
カウンセリングに正解の話し方はありません。泣いてもいい、沈黙があってもいい、話が途中で変わってもいい。あなたが今ここに来てくださること、それだけで十分なスタートです。
ここケアセンターでは、初回カウンセリングは無料でお受けいただけます。「まずどんな場所か見てみたい」「自分がカウンセリングを受けていいか確かめたい」という方も大歓迎です。
カウンセリングのみの利用も可能ですし、復職・再就職を見据えた支援へのステップアップも、あなたのペースで進めることができます。名古屋市の指定を受けた施設のため、障害福祉サービス受給者証(自治体に申請して取得できる証明書)をお持ちの場合には、自己負担を抑えてご利用いただけます。詳しくは当センターまたはお住まいの自治体へお問い合わせください。
準備は何もいりません。今のあなたの状態で来ていただければ、そこから一緒に始めていきます。
引用元・参考文献
- 厚生労働省「こころもメンテしよう〜若者を支えるメンタルヘルスサイト〜」カウンセリングについて
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/youth/consultation/counseling/index.html - 厚生労働省 e-ヘルスネット「カウンセリング/心理療法」
https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/keywords/counseling - 厚生労働省「うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)」厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf


