Columnコラム

「仕事が辛い」は弱さじゃない。その感覚が教えてくれること

「仕事が辛い」は弱さじゃない。その感覚が教えてくれること

「また朝が来てしまった」と感じたことはありますか。

目を覚ました瞬間から、仕事への不安や憂うつさが頭の中を占領してしまう。そんな経験をしている方は、決して少なくありません。仕事が辛いと感じることに対して「自分が弱いせいだ」「もっと頑張らなければ」と自分を責めてしまう方も多くいらっしゃいます。

しかし、仕事に辛さを感じるのは、あなたが弱いからではありません。その感覚には、何らかの意味があることが多いです。この記事では、仕事が辛いと感じる背景にあるものを整理しながら、今のあなたに合った向き合い方をお伝えします。

「仕事が辛い」は当たり前の感覚ではあるけれど、放置はNG

「社会人なら辛くて当然」「みんな我慢している」という言葉を、職場や身近な人から聞いたことがある方もいるかもしれません。確かに、仕事にはストレスがつきものです。しかし、「辛さが当たり前」であることと、「辛さをそのまま放置してよい」こととは、まったく別の話です。

辛さを感じたまま無理を続けていると、心や身体にじわじわと影響が出てきます。最初は「なんとなくしんどい」という程度だったものが、次第に眠れなくなったり、食欲がなくなったり、朝起き上がれなくなったりという症状へと変化していくことがあります。これは、心が限界に近づいているメッセージと考えられます。

厚生労働省の調査によると、仕事や職業生活に強いストレスを感じている労働者の割合は約半数にのぼると報告されています※1。それほど多くの人が何らかのストレスを抱えながら働いている一方で、適切なサポートを受けられていない方も多い現状があります。

※1 厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」より。調査対象は常用労働者10人以上の民間企業に勤める労働者。調査年度により数値は変動する場合があります。

辛さの正体を知る。「環境」「特性」「心の状態」の3つの視点

仕事が辛いと感じる原因は、一つではありません。大きく分けると「環境」「特性」「心の状態」の3つの視点から整理することができます。

環境の問題

業務量の多さや人間関係のトラブル、職場の雰囲気など、外側にある要因です。上司からの過度なプレッシャーや、コミュニケーションがうまくとれない職場環境は、誰にとってもストレスの原因になり得ます。

特性の問題

マルチタスクへの苦手さや、注意の集中・切り替えのしにくさ、対人場面での緊張しやすさなど、その人固有の特徴に関わるものです。こうした特性は、職場の求めることとのミスマッチが起きたときに、特に大きなストレスとして現れやすくなります。自分の特性を理解することで、「どんな環境なら働きやすいか」が見えてくることがあります。

心の状態

うつ病や適応反応症(適応障害)、不安症(不安障害)などの状態を指します。こうした状態にあるとき、ものごとを否定的に捉えがちになったり、将来への不安が膨らんだりすることがあります。心の状態が影響している場合、休息だけでは回復しにくいことがあり、専門的なサポートが助けになることがあります。

この3つは互いに絡み合っていることが多く、「どれか一つだけが原因」と断言できるケースはむしろ少ないといえます。まずは「自分はどのパターンに近いだろうか」と、ゆるやかに考えてみることから始めてみてください。

自分を責めるループから抜け出すために

仕事で失敗を繰り返したり、休職を余儀なくされたりすると、「自分はダメだ」「なぜこんなこともできないのか」という思いが頭の中で繰り返されることがあります。これは認知行動療法でいう「思考のクセ」のひとつであり、心が疲れているときほど陥りやすい状態です。

こうした自己否定の思考は、気合いや根性で打ち消そうとしても、なかなかうまくいきません。むしろ「もっとしっかりしなければ」と力を入れるほど、逆に消耗してしまうことがあります。

大切なのは、自分を責めることを「やめようとする」よりも、その思考のパターンそのものに気づき、少しずつほぐしていくことです。認知行動療法は、そのための体系的なアプローチとして、多くの研究で効果が確認されています。「考え方のクセを変える」というよりも、「思考と感情と行動のつながりをていねいに見直す」という作業です。

「働き続けられる自分」を取り戻すための3つのステップ

辛さを感じながら仕事を続けること、あるいは休職から復帰を目指すことは、「もとの自分に戻る」ことではありません。自分の特性や心の状態を理解した上で、「自分に合った働き方」を新たに作っていくプロセスです。

そのために、以下の3つのステップを意識してみてください。

ステップ1 今の状態や正直な気持ちを把握する

「なんとなく辛い」という段階で踏みとどまらず、いつ頃から、どのような場面で、どんな辛さを感じているかを言葉にしてみることが出発点になります。日記やメモに書き出すだけでも、思考が整理されることがあります。「これくらいのことで大げさではないか」と感じる必要はありません。小さなサインも大切にしてください。ただし、こうした自己観察はあくまで出発点であり、心理師に話すことでより深く整理できることがあります。

ステップ2 自分の特性や傾向を理解する

「何が得意で、何が苦手か」「どんな環境でストレスを感じやすいか」を把握することは、仕事選びや職場との関わり方を考える上でとても重要です。こうした自己理解を深めるプロセスを、心理師と一緒に取り組むことも一つの方法です。

ステップ3 焦らず、段階的に動き出す

復職や就職活動は、「早ければ早いほどよい」とは限りません。心身の状態が整っていない段階で焦って動き始めると、再び同じ状態に陥るリスクが高まることがあります。自分のペースで、少しずつ動き出すことが、長く安定して働くための土台になります。

一人で抱え込まないためにカウンセリングを活用する。

「友人にも相談しにくい」「家族に心配をかけたくない」という思いから、悩みを一人で抱え込んでしまう方は少なくありません。しかし、自分だけの力で整理しようとすることには限界があります。

カウンセリングは、診断や薬の処方を目的とするものではなく、「話を聞いてもらい、自分自身を整理する場」です。専門的な訓練を受けた心理師が、あなたの話をじっくりと聞きながら、思考の整理や感情の理解をサポートします。第三者に話すことで、自分だけでは気づけなかった視点が生まれることも少なくありません。

ここケアセンターでは、初回カウンセリングを無料でご利用いただけます。「まず話を聞いてほしいだけ」「復職するかどうかもまだ決まっていない」という段階でも、もちろんお越しいただけます。カウンセリングのみのご利用も可能です。なお、カウンセリングは対面形式で行っており、オンラインや電話でのご対応は原則として行っておりませんので、ご来所いただける方はまずお気軽にご相談ください。

公認心理師が、認知行動療法を中心とした科学的根拠に基づいたアプローチで、あなたの状態に合ったサポートを提供します。再発や離職を防ぎながら、長く安定して働き続けるための土台づくりを、一緒に考えていきましょう。

「仕事が辛い」という感覚は、あなたの弱さではなく、何かが変わるべきタイミングを知らせているサインかもしれません。その声を、ひとりで抱えたままにしないでください。小さな一歩が、大きな変化のはじまりになります。


引用元・参考文献

  1. 令和5年版 労働経済の分析|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/23/index.html
  2. 仕事の不安やストレスについて|厚生労働省 こころの耳
    https://kokoro.mhlw.go.jp/
  3. 認知行動療法について|国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター
    https://cbt.ncnp.go.jp/
  4. 労働安全衛生調査(実態調査)|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/h28-46-50b.html

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