Columnコラム

ADHD(注意欠如多動症)で仕事が覚えられない理由と、今日からできる5つの対策

ADHD(注意欠如多動症)で仕事が覚えられない理由と、今日からできる5つの対策

「昨日教わったばかりなのに、また忘れてしまった」「何度メモしても仕事が覚えられない」。そんな経験が続いていませんか。

仕事を覚えることへの難しさを感じ、「なかなか上手くいかない」ともどかしい気持ちを抱えている方もいるかもしれません。でも、これは努力不足でも意志の弱さでもなく、脳の特性によるものである可能性があります。

注意欠如多動症(ADHD)のある方が「仕事が覚えられない」と感じる背景には、脳の情報処理の仕組みが深く関わっています。この記事では、なぜ覚えられないのかをわかりやすく解説したうえで、今日から取り組める具体的な対策をご紹介します。

「仕事が覚えられない」の正体はワーキングメモリの弱さにある

注意欠如多動症(ADHD)のある方に多く見られる「仕事が覚えられない」という困りごとは、主にワーキングメモリ(作業記憶)の弱さと関連していると考えられています。

ワーキングメモリとは、受け取った情報を頭の中に一時的に保ちながら、同時に処理・活用する能力のことです。「脳のメモ帳」とも呼ばれ、私たちが話を聞きながら内容を整理したり、手順を覚えながら作業を進めたりするときに欠かせない機能です。

注意欠如多動症(ADHD)のある方は、このワーキングメモリの容量が小さい傾向があると言われています。上司から口頭で指示を受けているあいだに途中の内容が抜け落ちてしまったり、作業を進めるうちに最初の手順を忘れてしまったりする現象の多くは、このワーキングメモリの特性に起因しているのです。

「ちゃんと聞いていたのに、気づいたら抜け落ちている」という経験がある方は、怠けているのでも集中力が足りないのでもなく、脳の情報処理の容量の問題であることをまず知っていただきたいと思います。

大人になってから気づく注意欠如多動症(ADHD)

国立精神・神経医療研究センターによると、注意欠如多動症(ADHD)は学童期の3〜7%に見られ、成人でも約2.5%の方が診断に該当するとされています。注意欠如多動症(ADHD)の特性は子どもの頃から存在しますが、大人になって仕事や職場環境が複雑になってはじめて「困りごと」として顕在化するケースが少なくありません。

子ども時代には努力や適応力でなんとかカバーできていたことが、複数の業務を同時にこなす職場では立ちゆかなくなることがあります。「今まで何とかやってきたのに、なぜ急にできなくなったんだろう」と戸惑う方もいますが、それはあなたの努力が足りなくなったわけではなく、環境の要求水準が上がったからだとも言えます。

「覚えられない」が積み重なるとき、起こりやすいこと

仕事でミスや物忘れが重なると、「うまくいかない」という気持ちが積み重なりやすくなります。不安が増すとさらに注意が散漫になりやすくなるため、できることから少しずつ対策を取ることが大切です。

また、「わかったふりをして確認しないまま進める」という行動もよく見られます。何度も同じことを聞くことへの申し訳なさから、曖昧なまま作業を進めてしまい、後から大きなミスにつながるケースです。これも責任感の裏返しであることが多いのですが、結果的に状況を悪化させてしまいます。

カウンセリングや認知行動療法では、「うまくできない」という思い込みのパターンに気づき、より適切な考え方へ切り替えていくサポートを行っています。セルフケアだけで解決しようとするよりも、専門家とともに取り組むことで、変化がより安定したものになりやすいです。

今日からできる5つの対策

注意欠如多動症(ADHD)の特性によるワーキングメモリの弱さは、工夫次第で補うことができます。そういう発想の転換が、仕事上の困りごとを大きく変えるきっかけになります。

1. 「脳内メモは信用しない」と決める

最も基本となる対策は、自分の記憶に頼らないことです。上司からの口頭指示、打ち合わせで決まったこと、ふと思いついた用事など、あらゆることをすぐにメモする習慣をつけましょう。

「これくらいは覚えていられる」と思う気持ちは自然ですが、ワーキングメモリの容量が小さい場合、その自信はほぼ裏切られます。メモをとることで頭の中の作業スペースが空き、目の前の作業に集中しやすくなるという副次的な効果もあります。

スマートフォンのメモアプリやタスク管理アプリも活用しましょう。手書きメモと組み合わせ、リマインダー機能で「思い出させる」役割を外部に任せることで、記憶の負担を大幅に減らすことができます。

2. 指示は「書き直し」までセットにする

話を聞きながら取る「その場メモ」は、後で読み返しても「これ何だっけ?」となりがちです。会議や指示を受けたあとに、30分以内に内容を整理し直す「清書メモ」をつくる習慣をおすすめします。

清書の段階で内容の曖昧な部分に気づけるので、その場で確認に戻るタイミングにもなります。「1回で全部覚えなければ」というプレッシャーが減り、ミスも減っていきやすくなります。

3. タスクを小さく分解する

「仕事の手順を覚えられない」という困りごとの背景には、タスク全体の大きさに圧倒されてしまうことも関係しています。「資料作成」という大きな塊を「情報収集→構成案作成→下書き→仕上げ」のように細かく分解し、ひとつずつ完了させていくと取り組みやすくなります。

チェックリストにして目につく場所に貼っておくと、「次に何をすれば良いか」を記憶から取り出す必要がなくなり、作業への入りやすさが変わります。

4. 集中しやすい環境を整える

注意欠如多動症(ADHD)のある方は、目や耳から入る刺激に注意を奪われやすい傾向があります。不要な書類やスマートフォンをデスクから離す、静かな場所や個室を確保するなど、気が散りにくい環境をつくることがワーキングメモリの消耗を防ぐことにつながります。

一方で、適度な環境音がある場所の方が集中できるという方もいます。自分がこれまでに集中できた環境を振り返り、自分に合ったスタイルを見つけることが大切です。

5. 「確認すること」を遠慮しない

注意欠如多動症(ADHD)のある方に限らず、「何度も聞いて申し訳ない」という気持ちは誰にでもあるものです。しかし、わかったふりをして進めることは、後から大きなミスにつながります。

「後で確認できるようにメモを取らせてください」と伝えてからメモを取り、内容を確認したり、指示を受けたあとに自分の理解を声に出して確認する(復唱する)習慣をつけたりすることで、記憶の負担を減らしつつミスを防ぐことができます。

専門家のサポートを活用することが、変化の近道に

「工夫してみたけど、一人ではなかなか続かない」という方も多いのではないでしょうか。特性に気づいて対策を立てることは大切ですが、それを継続し、職場での困りごとに実際に活かしていくためには、専門家のサポートがあると大きく変わります。

私たちここケアセンターでは、公認心理師による認知行動療法を中心とした支援を提供しています。「仕事が続かない」「自分の特性に合った働き方がわからない」という方にも、自己理解から一緒に取り組んでいます。

認知行動療法(CBT)は、仕事上の困りごとに対して「どう考え、どう行動するか」を一緒に整理していくアプローチです。「うまくいかない」という思考パターンに気づき、より適切な対処行動へとつなげていくプログラムを、ご自身のペースで進めることができます。

初回カウンセリングは無料で受けられますので、「まず話を聞いてもらいたい」という段階からでもお気軽にご相談ください。初めての方へのページでは、相談の流れや当センターについての詳細をご覧いただけます。

仕事が覚えられないのは、あなたの努力不足ではないかもしれません。特性に合った工夫と支援があれば、長く安定して働く道はきっとひらいていきます。

引用元・参考文献

  1. 注意欠如・多動症(ADHD)|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
    https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease07.html
  2. “ADHDタイプ”の方の対処策②|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
    https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/rinshoshinri/rinshoshinri_blog20220228-2.html
  3. 注意欠如多動症|発達障害情報のポータルサイト
    https://hattatsu.go.jp/supporter/healthcare_health/about-adhd-2/
  4. “ADHDタイプ”の方の対処策①|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
    https://hsp.ncnp.go.jp/column/heart_detail.php?@uid=yIEnSBVEL6FFI54M

関連記事

ページのトップへ