Columnコラム

将来に絶望感を覚える状況から回復に踏み出すには

将来に絶望感を覚える状況から回復に踏み出すには

仕事のことを考えると、毎日こんな気持ちに囚われていませんか。

「なぜ自分はこうなってしまったんだろう」
「このまま一生、立ち直れないんじゃないか」
「将来が、まったく見えない」

朝、目が覚めるたびに重くなる体。何をしても楽しいと思えない日々。気力が出ず、「情けない」という気持ちが頭から離れない。そんな状態の中で、将来を前向きに考えることは、ほとんど不可能に感じられるかもしれません。

でも、少しだけ立ち止まってみてください。

心の不調には、性格や意志だけでは説明しきれない要因が重なっていることがあります。今の気持ちには、きちんとした理由があります。「なぜ自分はこんなに将来が見えなくなってしまったのか」という問いに向き合いながら、回復への入口を一緒に探していきます。

真面目だからこそ、限界が来ることがある

「弱い人間だからこうなった」「もっと頑張れたはずなのに」

仕事で心身に不調を感じている方の多くが、自分を責め続けているのではないでしょうか。しかし、心の不調は性格の弱さや意志の問題ではないとされています。

厚生労働省が作成した認知行動療法の患者向け資料によれば、うつ状態は「脳の過度な疲労によってもたらされた病的な心身の状態」であり、真面目で責任感が強く、自分一人で抱え込んでしまいがちな人がなりやすいともいわれています(※1)。一生懸命に生きてきたからこそ、限界が来てしまったとも考えられます。

まずは、自分を責めることを少しだけ手放すところから始められるといいかもしれません。自己批判が心の不調をどのように長引かせるかについては、当センターのコラム「自己批判とセルフコンパッション―自分を責め続ける心のメカニズム」でも詳しく解説しています。

なぜ自分が?その問いには、ちゃんと答えがある

将来に希望が持てない、何をしても意味がないように感じる。そうした「絶望感」は、うつ状態に伴いやすい心理状態のひとつとして知られています。ここで大切なのは、この感覚が「現実そのもの」ではなく、「うつ状態が作り出した見え方」である可能性が高いということです。

うつ状態が引き起こす「3つのマイナス思考」

厚生労働省が示す認知行動療法の資料によれば、うつ的な状態のとき、私たちは「自分・周囲・将来」の3つに対してマイナスの考えを持ちやすくなるといわれています(※1)。

  • 自分へのマイナス思考:「集中できない、何もできない。自分はダメな人間だ」
  • 周囲へのマイナス思考:「誰も自分のことを必要としていない。迷惑をかけてばかりだ」
  • 将来へのマイナス思考:「今の状況はこのまま変わりようがない。このつらい気持ちは一生続く」

あなたの頭の中に、このような声はありませんか?

こうした思考は「認知の歪み」と呼ばれる思考パターンと関連しており、なかでも「否定的な予測」(根拠が乏しいにもかかわらず将来を悲観的に予測してしまうパターン)や「過度な一般化」(一度の失敗を「自分はいつもこうだ」と全体に当てはめてしまうパターン)が、絶望感をより強めやすいとされています。

「前の職場でうまくやれなかった自分は、どこへ行っても通用しない」「このまま自分は変われないのかもしれない」。こうした考えが浮かんでくるとしたら、それはあなたが「ダメな人間」だからではなく、今まさに脳がそういう状態にあるからかもしれません。その思考は、うつ状態というフィルターを通した「世界の見え方」であり、現実そのものではない可能性があります。

なお、このような思考パターンと回復の関係については、当センターの別コラム「うつ病と絶望感の関係:その影響と対処法」でも詳しく解説しています。

抜け出せないのは意志の弱さではなく、悪循環があるから

「わかってる、でも抜け出せない」。そう感じている方も多いのではないでしょうか。絶望感から抜け出しにくい背景には、ある程度説明できるメカニズムがあるとされています。

悪循環には必ず「出口」がある

認知行動療法の観点では、思考・気分・行動・身体反応の4つの領域は互いに影響し合うと考えられています(※3)。たとえば、次のような流れが起こりやすいとされています。

  1. 「どうせ何をやってもうまくいかない」という思考が浮かぶ
  2. 気分が落ち込み、何もやる気が起きなくなる
  3. 行動が減り、部屋にこもりがちになる
  4. 体が重くなり、さらに「やっぱり自分はダメだ」という思考が強まる

この流れの中にいると、「もがくほど沈む」ような感覚になることがあるかもしれません。

ただし、このサイクルには「出口」があります。思考だけでなく、行動や身体反応に少しずつ働きかけることで、サイクルが変わっていく可能性があります。「すべてを一気に変えなければ」と焦らなくても大丈夫です。ほんの小さな変化が、きっかけになることがあります。

この悪循環と行動の関係については、当センターのコラム「報酬感受性の低下と行動活性の喪失―「楽しい」と感じにくくなるメカニズム」でも詳しく解説しています。

今日たった一歩でいい。回復は、小さなところから始まる

将来のことを考えようとすると、不安が大きくなって思考が止まってしまうこともあるかもしれません。そのような時に一つの助けになりうるのが、「遠い将来」から目を離し、「今日できること」に焦点を移すことです。

ステップ1:まず、「今の自分」を否定しない

今のあなたは、体と心を回復させているところです。何も生産的なことができていないように見えても、「休養」という大切な時間を過ごしていると考えてみてはいかがでしょうか。

ステップ2:生活リズムを少しずつ整える

毎朝同じ時間に起き、日光を浴びることが、心身の調子を整える一助になる可能性があります。最初は「カーテンを開ける」「窓の外を5分眺める」くらいからで十分かもしれません。

ステップ3:「なぜこうなったか」を整理するための支援を受ける

一人で「なぜ」を考え続けても、答えは見つかりにくいことが多いものです。頭の中でぐるぐると同じ考えが繰り返されるだけで、疲弊してしまうこともあるでしょう。認知行動療法では、自分の思考パターンや行動の癖を専門家と一緒に整理することで、「なぜ」の答えに少しずつ近づいていくことが期待できます。自己理解が深まることで、「自分に合った働き方」や「再発や離職を防ぐための環境選び」も見えやすくなるかもしれません。

「マルチタスクが苦手」「コミュニケーションに不安がある」といった特性がある方も、それを「欠点」と捉えるより、「自分の特性として理解し、合った環境を選ぶ」という視点に変えていくことが、長く安定した就労につながりやすいとされています。

うつ病休職者を対象とした集団認知行動療法の研究では、プログラム実施後にうつ症状の低減と社会機能の回復が示されています(※2)。在職中・休職中を問わず、一人で悩み続けるよりも専門的なサポートを活用することが回復を助ける可能性があります。

話せなくても大丈夫。一緒に考えていきましょう

「自分の悩みを人に話すのが苦手」

「うまく説明できるか不安」

そう思って、相談することをためらっていませんか?

友人にも打ち明けられない、家族には心配させたくない、という状況で、感情を誰とも共有できないまま過ごしていると、孤立感が深まりやすくなります。孤立感は、絶望感をさらに強める要因になりうると考えられています。

専門家のカウンセリングでは、うまく話せなくても大丈夫です。「何が辛いか、うまく言葉にできないんですが…」というところから始めて構いません。話しながら、自分の気持ちが整理されていくことも少なくありません。また、「職場や面接で自分の状態や特性をどう説明すればいいか」「自己PRの仕方がわからない」といった就職・復職に向けた具体的な悩みも、専門家と一緒に取り組んでいくことができます。

当センターでは、公認心理師が認知行動療法を中心とした心理支援を提供しています。「自己理解から始めたい」「自分に向いている仕事や働き方を探したい」という方に向けたサポートも行っています。

  • 「なぜこうなったのか」を一緒に整理する
  • 思考パターンや行動の癖を把握し、再発防止につなげる
  • 自分の特性に合った職場・働き方を探す支援

初回カウンセリングは無料です。「まず話を聞いてもらいたいだけ」という方も、ぜひお気軽にWeb予約してください。

問いを持てていることが希望

将来が見えない、なぜ自分がこうなったのかわからない。そんな問いを抱えているということは、あなたがまだ「変わりたい」と思っているあらわれかもしれません。

絶望感は、うつ状態が作り出した「脳の見え方」のひとつである可能性があります。それは現実そのものではなく、回復とともに少しずつ変わっていくことが期待できます。

一人で「なぜ」を抱え続けなくていい。あなたのペースで、一緒に答えを探していきましょう。

引用元・参考文献

  1. 厚生労働省こころの健康科学研究事業「うつ病の認知療法・認知行動療法 患者さんのための資料」慶應義塾大学認知行動療法研究会編
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
  2. 田上明日香ほか(2012)「うつ病休職者に対する心理職による集団認知行動療法の効果:うつ症状、社会機能、職場復帰の困難感の視点から」『行動療法研究』38巻3号
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjbt/38/3/38_KJ00008598588/_article/-char/ja
  3. 厚生労働省こころの健康科学研究事業「うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル」慶應義塾大学認知行動療法研究会編
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf

関連記事

ページのトップへ