「仕事でケアレスミスが続く」「やるべきことはわかっているのに、なぜか取りかかれない」「マルチタスクがどうしても苦手で、周りについていけない」。こうした悩みを抱えていませんか?
もしかすると、それは努力不足や性格の問題ではなく、ADHD(注意欠如多動症)という脳の特性が関係しているかもしれません。ADHDと聞くと「子どもの障害」というイメージを持つ方もいるかもしれませんが、実は大人になってから初めて気づく方も多くいます。
この記事では、大人のADHDとはどのようなものか、仕事や生活にどんな影響があるのか、そしてどのように向き合っていけばよいのかをわかりやすくお伝えします。「自分に当てはまるかも」と少しでも感じた方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
大人のADHDとは?子どもの頃から続く「脳の特性」
そもそもADHDってどんなもの?
ADHDは、正式には「注意欠如多動症」と呼ばれる神経発達症(発達障害)のひとつです。「不注意」「多動性」「衝動性」という3つの特性があり、日常生活や社会生活に困難を感じる状態を指します。
ここで大切なのは、ADHDは生まれつきの脳の機能の違いによるものであり、本人の努力不足や育て方の問題ではないということです。脳内の神経伝達物質であるドーパミンやノルアドレナリンの働きに偏りがあることが関係していると考えられています。
なぜ大人になってから気づくの?
子どもの頃は、学校や家庭という比較的わかりやすい枠組みのなかで生活しているため、多少の特性があっても周囲のサポートや本人の工夫でなんとか乗り切れる場合があります。
しかし、社会人になると状況は変わります。複数の仕事を同時に進めたり、人間関係がより複雑になったり、自分で判断して行動する場面が増えるなかで、これまで表に出にくかった特性が顕在化し、「うまくいかない」と感じるようになるのです。
厚生労働科学研究の過去の報告※では、日本における成人期ADHDの有病率はおよそ2.09%、つまりおよそ50人に1人の割合とされており、決して珍しいものではありません。
※成人期注意欠陥・多動性障害の疫学、診断、治療法に関する研究|厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/18591
「自分だけがうまくいかない」と感じていませんか?
仕事で見られやすい困りごと
大人のADHDの方が職場で感じやすい困りごとには、たとえば次のようなものがあります。
- 会議や打ち合わせ中に集中が途切れてしまい、話の内容を追いきれない
- 複数の業務を同時に進めるマルチタスクが苦手で、優先順位をつけられない
- 書類の記入漏れやメールの返信忘れなど、ケアレスミスが繰り返される
- 時間の感覚がつかみにくく、締め切りに間に合わないことがある
- デスク周りの整理整頓が難しい
こうしたことが重なると、上司や同僚との関係にも影響し、「自分はダメなんだ」と自信を失ってしまう方も少なくありません。
見落とされがちな「内面の落ち着かなさ」
大人のADHDでは、子どもの頃のように教室を走り回るような「多動」は目立たなくなることが多い一方で、頭の中が常にざわざわしている、考えが次から次へと浮かんで落ち着かないといった「内面的な多動性」として残る場合があります。
また、思ったことをつい口に出してしまう、感情が高ぶりやすいといった衝動性も、対人関係のトラブルにつながりやすいポイントです。
放っておくとどうなる? 知っておきたい「二次障害」のリスク
ADHDの特性そのものは脳の働き方の違いであり、適切な対処ができれば日常生活に大きな支障なく過ごせる方もたくさんいます。しかし、特性に気づかないまま無理を重ねてしまうと、心や体にさまざまな不調が現れることがあります。これを「二次障害」と呼びます。
たとえば、仕事での失敗体験が積み重なって自信を失い、うつ病を発症したり、常に不安を感じる不安症(不安障害)につながったりするケースは珍しくありません。
「最近ずっと気分が沈んでいる」「朝起きるのがつらい」「人と会うのが怖い」といった症状がある場合は、ADHDの特性に加えて二次障害の可能性も考えられます。まずは医療機関を受診して、今の状態を正しく把握することが大切です。
自分を知ることが、回復への第一歩
診断を受けるにはどうすればいい?
「もしかして自分はADHDかもしれない」と思ったら、まずは精神科や心療内科を受診しましょう。ADHDの診断は問診を中心に行われ、現在の症状だけでなく、子どもの頃の様子や学校生活での困りごとなども含めて総合的に判断されます。必要に応じて、心理検査や知能検査が実施されることもあります。
診断がつくこと自体に抵抗を感じる方もいるかもしれません。しかし、診断は「ラベルを貼る」ためのものではなく、「自分の特性を理解して、適切な支援を受けるための手がかり」です。自分の特性がわかることで、「だから自分はこういう場面で苦労していたのか」と腑に落ちたとおっしゃる方も多くいます。
治療やサポートにはどんな方法があるの?
ADHDへの支援は大きく分けて「薬物療法」と「心理的アプローチ」があります。
薬物療法では、脳内の神経伝達物質のバランスを整える薬を服用することで、集中力の向上や衝動性のコントロールがしやすくなることが期待できます。ただし、薬の効果や副作用には個人差があるため、主治医としっかり相談しながら進めることが大切です。
心理的アプローチとしては、認知行動療法が注目されています。認知行動療法とは、自分の考え方のクセや行動のパターンに気づき、より生活しやすい方法を身につけていく方法です。たとえば「自分はダメだ」という思い込みを見直したり、タスク管理の具体的な工夫を一緒に考えたりします。
ここケアセンターでも、公認心理師による認知行動療法を通じて、大人のADHDの特性に合わせた支援を行っています。一人ひとりの困りごとに寄り添いながら、日常生活や仕事で活かせる具体的な工夫を一緒に考えていきます。
今日からできる、暮らしのなかの工夫
専門的な治療と合わせて、日常生活のなかでできる工夫を取り入れることも大切です。ここでは、心理師と一緒に実践していくことをおすすめしたい工夫をいくつかご紹介します。
やることは「見える化」する
頭の中だけで覚えようとせず、やるべきことはすべて書き出すことを習慣にしましょう。ノートやアプリなど、ツールはなんでもかまいません。大事なのは、ひとつの場所にまとめて書き出すことです。完了したタスクに線を引いて消していく達成感も、モチベーションの維持に役立ちます。
時間の流れを「体感」できるようにする
ADHDの特性として、時間の経過を感覚的に把握しにくいことが知られています。アナログ時計を使って「残り時間」を視覚的にとらえたり、スマートフォンのタイマーやリマインダーを活用したりすると、時間管理がしやすくなります。
「環境」を自分に合わせて整える
集中しやすい環境は人それぞれです。音が気になる方はノイズキャンセリングイヤホンを使う、視界に余計なものが入らないように机の上を片づけるなど、自分に合った環境づくりを試してみましょう。
ただし、これらの工夫はあくまで補助的なものです。「自分ひとりでなんとかしなければ」と思い込まず、心理師やカウンセラーと一緒に取り組むことで、自分に合ったやり方が見つかりやすくなります。
自分の特性を活かせる働き方を見つけるために
ADHDの特性はネガティブな面ばかりではありません。興味のあることへの集中力の高さ、斬新なアイデアを生み出す発想力、すばやく行動に移せるフットワークの軽さなど、仕事の場面で強みとなる特性もたくさんあります。
大切なのは、自分の得意なことと苦手なことを正しく理解し、特性に合った環境で力を発揮できるようにすることです。「自分に向いている仕事がわからない」「復職への一歩が踏み出せない」と感じている方は、一人で抱え込まず、専門の支援機関に相談してみましょう。
ここケアセンターでは、公認心理師による認知行動療法を中心とした支援を行っています。「自分の特性を理解したい」「自分に合った働き方を見つけたい」という方のために、まずはお話を聴くところから始めています。初回カウンセリングは無料ですので、「まだ診断を受けていないけれど、最近気になっている」という段階でもお気軽にご相談ください。
一人ひとりのペースに合わせて、安定した生活リズムの回復と、長く働き続けるための土台づくりをサポートいたします。
引用元・参考文献
- ADHD(注意欠如・多動症)|NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター
https://www.ncnp.go.jp/hospital/patient/disease07.html - 成人期注意欠陥・多動性障害の疫学、診断、治療法に関する研究|厚生労働科学研究成果データベース
https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/18591 - 成人期の注意欠如・多動症に対する個人認知行動療法(ADHD-CBT)|国立精神・神経医療研究センター 認知行動療法センター
https://cbt.ncnp.go.jp/research_top_detail.php?@uid=AAqyE2nshYRvSUE5 - ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療|厚生労働省 e-ヘルスネット
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html


