
毎日不安で頭がいっぱい。自分の行動を何度も確認してしまう。それでも不安が消えない。
そんな状態が続くなかで、ふとこんなふうに感じたことはありませんか?
- 最近、気分が落ち込みやすくなってきた
- 以前はもっと元気だったのに、何をしても楽しく感じない
- 自分の存在に価値を感じられなくなってきた
- 強迫行為を繰り返す自分が嫌になってきた
- もう疲れた、消えてしまいたいと思うことがある
もし思い当たることがあるなら、それは「強迫症とうつ病の併存」が関係しているかもしれません。
強迫症(強迫性障害)は、主に不安を和らげようとして特定の思考や行動を繰り返してしまう病気です。一方、うつ病は気分の落ち込みや意欲の低下が続く精神疾患です。この2つはまったく別の病気に見えますが、実際には同時に起こるケースも少なくありません。では、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
強迫症とうつ病は併発しやすい
強迫症の方の中には、うつ病を併発する人が少なくありません。実際の研究でも、強迫症の患者のおよそ半数近くが、人生のどこかでうつ病を経験するという報告があります。
理由の一つは、強迫症そのものが日常生活に大きな負担を与えるからです。強い不安や罪悪感に日々さらされるなかで、「自分は普通じゃない」「このままでは何も変わらない」といった否定的な考えが積み重なり、次第に気分の落ち込みにつながることがあります。
また、強迫行為によって自由な時間が奪われ、好きなことをする余裕がなくなってしまうことも、うつ的な感情を強める一因となります。強迫症による孤立や自己評価の低下が、うつ症状を引き起こしやすくするのです。
併存することで起こる困難
強迫症とうつ病が同時に存在すると、それぞれの症状が悪化しやすくなるという特徴があります。
たとえば、うつ状態にあると意欲が下がるため、強迫行為をコントロールするための認知行動療法(CBT)などにも取り組みにくくなります。逆に、強迫症状によってうつの回復が妨げられることもあります。
「どうせよくならない」と感じて治療をあきらめてしまうこともあるため、どちらの症状も視野に入れた支援がとても重要です。
対処法と回復のためにできること
両方の症状があるときは、まず「どちらかを無理に消そうとしない」ことが大切です。強迫症もうつ病も、完治よりもまずは「今より少し楽に生きられる状態」を目指すことが、結果的に回復への近道となります。
医師と連携して両方にアプローチする
強迫症とうつ病の治療には、薬物療法と心理療法の併用が効果的です。強迫症に用いられる選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、うつ病の治療にも有効です。また、認知行動療法(CBT)は両方の症状にアプローチできます。
どちらの症状が強いかを見極めながら、医師と相談して優先順位をつけることで、負担の少ない治療計画が立てられます。
自己否定の思考に気づく
「自分はダメだ」「迷惑をかけている」といった思考が強まっているときは、それがうつの影響である可能性を意識してみましょう。感情と事実を切り離すトレーニングや、思考の再構成(リフレーミング)は、少しずつ気持ちを軽くしてくれます。
小さな喜びを取り戻す
強迫行為や抑うつ感に圧倒されているときでも、小さな「楽しい」や「安心する」感覚を取り戻すことは回復の足がかりになります。散歩をする、音楽を聴く、おいしいものを食べるなど、五感を使った体験を意識して取り入れてみましょう。
当てはまることがあった方へ
強迫症なのに、なぜか気分が落ち込みやすくなっている。そんな自分を責めてしまっていませんか。けれどそれは、あなたの心がそれだけ頑張ってきた証かもしれません。
強迫症とうつ病が同時に現れることは決して珍しいことではありません。どちらか一方だけを見るのではなく、今のあなたの「しんどさ」全体を理解しようとしてくれる人とつながることが、第一歩になります。
今はうまくいかないことがあっても、少しずつ視点を変えていくことで、心の重さは和らいでいきます。焦らず、自分のペースで歩きながら、あなたらしい回復の道を見つけていきましょう。