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Columnコラム

新年度と全般不安症

新年度と全般不安症

春になると、新しい学校や職場、生活環境に身を置く人が増えていきます。年度の切り替わりは、環境が大きく変わる時期であり、それに伴って心にも負担がかかりやすくなります。なかでも、日常的に強い不安を抱えてしまう「全般不安症(GAD)」の方にとっては、新年度は特に注意が必要なタイミングといえます。

今回は、新年度という節目が全般不安症にどう影響するのかを中心に、その特徴と向き合い方を考えていきます。

なぜ新年度に不安が強まりやすいのか

全般不安症は、特定の出来事に限らず、日常のあらゆることに対して過剰な不安や心配が続く状態です。家族や仕事のこと、体調、将来の出来事など、「何か悪いことが起きるかもしれない」といった予測に頭が占められ、安心して過ごすことが難しくなります。

新年度は、多くの人にとって不確実なことが増える時期です。新しい環境、新しい人間関係、未知の役割や責任など、変化が重なるほど、不安を感じやすくなります。これは全般不安症の特徴である「先のことをコントロールできない状態」に対する感受性が強く反応している状態ともいえます。

また、春は日照時間や気温の変化も大きいため、体内のリズムが乱れやすく、それが心理的なバランスに影響を与えることもあります。

現れやすい心と体の変化

新年度において、全般不安症の方が経験しやすい症状には以下のようなものがあります。

一つは、常に心配ごとが頭から離れず、気分が落ち着かなくなることです。些細な予定変更や人間関係のすれ違いにも敏感に反応し、「自分が何か間違っているのではないか」と自分を責めやすくなります。

また、身体面では動悸、胃の不調、肩こり、眠りの浅さなど、ストレス由来の不調が現れやすくなります。こうした症状は体だけでなく、不安をさらに強める要因にもなり、悪循環が生まれることも少なくありません。

「このままで大丈夫だろうか」「きちんとやれるだろうか」といった不安に押しつぶされそうになりながらも、それを口に出せずに我慢してしまう方も多くいます。

不安との付き合い方を見直す

全般不安症において重要なのは、不安を「なくそうとする」のではなく、「うまく付き合っていく」ことです。新年度は不安が強まりやすいタイミングであることをあらかじめ理解し、心と体の反応に気づいてあげることが第一歩です。

たとえば、考えすぎているときには、一度紙に書き出してみる。現実的に対処できることと、どうにもならないことを分けてみる。それだけでも、頭の中の混乱を整理する助けになります。

また、不安を感じている自分を否定せず、「そう感じるのは自然なことだ」と受け止めることで、気持ちが少しずつ落ち着いていくこともあります。

生活面では、睡眠や食事のリズムを意識して整えること、身体を動かす習慣を取り入れることも、心を安定させるために大切な土台となります。

当てはまることがあった方へ

新年度に入ってから不安が強まっている、あるいは心身に変化が出てきていると感じた場合は、それは頑張りすぎているサインかもしれません。不安は誰にでもあるものですが、つらさが続く場合には、早めに信頼できる人や専門家に相談してみてください。

変化の多い時期には、視点の持ち方を少し変えるだけでも心が軽くなることがあります。再解釈のような思考の工夫を通じて、不安との距離のとり方を見直していくことができます。焦らず、自分のペースで小さな変化を積み重ねながら、前に進む準備をしていきましょう。


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