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休職中に朝起きられなくなる理由と、無理なく整える方法

休職中に朝起きられなくなる理由と、無理なく整える方法

「また今日も、起きられなかった」

休職してから、朝のリズムが完全に崩れてしまったという方は多くいます。仕事のプレッシャーから解放されたはずなのに、かえって昼夜逆転が進んでしまった。そんな経験をされている方もいるのではないでしょうか。

じつは、休職中の生活リズムの乱れには、怠けや意志の弱さとはまったく関係のない、心身のしくみが深く関わっています。この記事では、休職中に起こりやすい朝の起床困難の背景と、復職に向けて少しずつリズムを取り戻すための実践的な考え方をお伝えします。

休職するとなぜ、朝起きられなくなるのか

「休んでいるのだから、好きなだけ寝ればいい」——そう思って過ごしていたら、いつの間にか昼過ぎまで眠るようになっていた、という方は少なくありません。

これは、「体内時計」の仕組みと密接に関係しています。私たちの体は、毎日同じ時間に光を浴び、食事をとり、活動することで、約24時間のリズムを維持しています。しかし休職によって仕事がなくなると、この規則正しい刺激が一気に失われます。起きる時間も食べる時間も自由になるため、体内時計は少しずつずれていき、やがて夜型に傾いていくことがあります。

さらに、うつ病や適応反応症(適応障害)を抱えている場合、脳内のホルモンバランスの影響で「日内変動」が起こりやすくなります。これは一日のうちで症状が変動する状態で、多くの場合、朝に最も症状が強く出て、夕方になると少し楽になるパターンをたどります。朝だけが異様につらく、夕方になると少し動ける——そんな方は、この日内変動が背景にある可能性があります。

「頑張って起きようとする」と逆効果になる理由

朝起きられない自分を責め、「明日こそ早起きしなければ」と強く思えば思うほど、かえって眠れなくなってしまう。こうした経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

これは、心理学的に見ると自然な反応です。「眠れなかったらどうしよう」「また起きられなかったら」という不安が高まると、脳と体が緊張状態になり、かえって睡眠を妨げる方向に働いてしまいます。認知行動療法の観点からは、こうした「睡眠へのこだわり」や「起きられない自分への否定的な評価」が、睡眠の問題を慢性化させる大きな要因のひとつとして知られています。

また、「休職中なのに生活リズムが乱れている自分は甘えている」という考え方が、回復の妨げになることもあります。休職は体や心を回復させるための期間です。その過程でリズムが乱れることは決して珍しいことではなく、背景にある心身の状態が影響しているケースが少なくありません。

つまり、「頑張って早起きする」という気合いだけのアプローチは、この悪循環を深めてしまうことがあるのです。大切なのは、プレッシャーを下げながら、小さなステップで体のリズムを少しずつ整えていくことです。

復職を見据えた「リズム回復」の考え方

休職中の生活リズム回復で大切なのは、「完璧な早起き」を目指すことではありません。まずは、体が社会的なリズムに近づくための「きっかけ」を少しずつ増やしていくことです。

起床時間より「光を浴びる時間」から整える

朝早く起きることを無理に目指すより、まず「光を浴びる習慣」を作ることが先決です。カーテンを開けて自然光を部屋に入れるだけでも、体内時計にリセットの信号が送られます。起きられた時間がいつであれ、目覚めたらまず窓を開ける。その一歩を続けることが、リズム回復の土台になります。

厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、日中に日光を浴びることが体内時計の調整に有効であると示されています。

「起きる時間」を少しずつ前にずらす

昼夜逆転している場合、いきなり早朝に起床しようとすると挫折しやすくなります。今の起床時間から、週に15〜30分ずつ前倒しするペースで少しずつ調整するほうが、体への負担が少なく継続しやすいとされています。焦らず、小さな前進を積み重ねることを意識しましょう。

「起きたら何をするか」を決めておく

起床直後に何をすべきかが決まっていないと、ベッドから出る理由が見つかりにくくなることがあります。「起きたらまず水を一杯飲む」「カーテンを開ける」「コーヒーを淹れる」といった、シンプルで小さな行動をあらかじめ決めておきましょう。朝の行動を決断が不要なルーティンにしておくことで、脳の負担が減り、動きやすくなることが期待できます。

日中に体を動かす時間を少し意識する

休職中は、日中にほとんど活動しない日が続くと、夜になっても眠気が生じにくくなります。軽い散歩や、家事など体を少し動かす時間を昼間に設けることが、夜の睡眠の質を少しずつ改善する助けになります。

「起きられない日」を責めないための視点

リズムを取り戻そうとしていても、うまくいかない日が出てくることもあるでしょう。そんなとき、「やっぱり自分はダメだ」と結論づけてしまうと、翌日への意欲がさらに湧きにくくなることがあります。

認知行動療法では、こうした「白か黒か」の極端な考え方のクセを認知の歪みと呼び、気分や行動に大きく影響することが知られています。「昨日よりは30分早く起きられた」「今日は光を浴びることができた」というように、できたことに目を向ける練習を意識的に取り入れることが、心の回復にもつながっていきます。

こうした「考え方のクセへの気づき」と「行動の小さな変化」を組み合わせていくのが、認知行動療法の基本的な考え方です。

一人で取り組む限界を感じたら

生活リズムの回復は、意志や努力だけでは難しい場合も多くあります。特に、うつ病や適応反応症(適応障害)、神経発達症(発達障害)などの背景がある場合は、専門家のサポートと組み合わせることで、回復の手ごたえが大きく変わることがあります。

次のような状態が2週間以上続いている場合は、専門家への相談を検討してみてください。どれだけ意識しても生活リズムが整わない、朝の倦怠感や落ち込みがひどくて日常生活もままならない、復職を考えたいが何から始めればいいか分からない——こうした状態は、一人で抱え込まず専門家と整理していくことで、出口が見えてくることがあります。

回復の第一歩を、一緒に踏み出しませんか

そんなときに、ぜひ私たちをご活用ください。ここケアセンターは、名古屋市で休職中・離職中の方の復職・再就職を専門に支援しています。うつ病、双極症(双極性障害)、適応反応症(適応障害)、神経発達症(発達障害)など、さまざまな背景を持つ方が、公認心理師によるカウンセリングや認知行動療法を活用しながら、ご自分のペースで回復に取り組んでいます。

「朝が起きられないまま、復職できるか不安」「生活リズムを整えるところから始めたい」「自分に合った働き方を見つけたい」——そんな段階からのご相談を受け付けています。初回のご相談は無料で、カウンセリングのみのご利用も可能です。

一人で抱え込まず、まずお気軽にご相談ください。

まとめ

朝起きられないことは、怠けや意志の弱さが原因ではありません。休職によって規則正しい刺激が失われ、体内時計が乱れること、またうつ病や適応反応症(適応障害)による日内変動の影響など、心身のしくみが深く関わっています。

大切なのは、「完璧な早起き」を無理に目指すことではなく、光を浴びる・起床時間を少しずつ前倒しする・朝の小さな行動を決めておくといった、体のリズムを少しずつ整えるアプローチです。そして、うまくいかない日があっても自分を責めず、できたことに目を向ける視点を練習していくことが、心の回復にもつながっていきます。

朝の一歩は、小さくていい。その積み重ねが、やがて安定した毎日へとつながっていくのではないでしょうか。

引用元・参考文献

  1. 健康づくりのための睡眠ガイド2023|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/suimin/index.html
  2. 概日リズム睡眠・覚醒障害|健康日本21アクション支援システム(厚生労働省)
    https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-02-006
  3. うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
  4. 不眠の認知行動療法(CBT-I)|日本睡眠学会
    https://jssr.jp/

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