
こんなふうに感じることはありませんか?
- 元気なときの自分と、沈んでいるときの自分がまるで別人のようだ
- 気分が高まるとすべてがうまくいく気がするが、あとで必ず反動が来る
- 落ち込んでいるとき、自分がダメな人間に思えて仕方がない
- 周囲に合わせて振る舞っているうちに、どれが本当の自分かわからなくなる
こうした「気分の波」が激しい状態は、双極症(双極性障害)と呼ばれる精神疾患と関係している場合があります。
双極症とは何か
双極症は、うつ状態と躁状態(または軽躁状態)が交互に現れる病気です。うつ状態では気分の落ち込み、興味の喪失、倦怠感などが続き、日常生活に支障をきたします。一方、躁状態では過剰な自信、活動量の増加、睡眠欲求の減少、衝動的な行動などが見られます。
躁と聞くと「元気な状態」と誤解されがちですが、実際には本人がコントロールできないほど気分が高まり、周囲とのズレやトラブルが生じることも少なくありません。とくに軽躁状態は一見すると「調子がいい」「積極的」と評価されやすいため、見過ごされやすい特徴があります。
気分の波の中で起きていること
気分が大きく動くと、そのたびに「今の自分が本当なのか?」という戸惑いが生まれます。躁的な時期には大胆な決断や行動に出たくなり、あれもこれもできそうな気になりますが、うつ状態に入ると一転して自己否定や後悔の気持ちに包まれてしまう。
このような「高揚と低下」の繰り返しは、自分の状態をうまく理解できなくなり、「本当の自分がわからない」という感覚につながることがあります。周囲の人からの理解も得にくく、自分を責めてしまいやすくなるのも、双極症に特徴的なつらさです。
診断されずに悩む人も多い
双極症には、うつ状態の時期が長く続き、躁の症状が目立ちにくい「双極Ⅱ型」というタイプがあります。このタイプは、うつ病と誤診されることも少なくありません。
しかし、治療方針はうつ病と異なります。抗うつ薬が躁状態を引き起こしてしまうリスクもあるため、誤ったアプローチが症状の悪化につながることもあります。過去の気分の波を丁寧にふり返り、必要に応じて精神科医に相談することが大切です。
向き合い方と工夫できること
気分の波がある方にとって大切なのは、「波をなくすこと」よりも、「波に振り回されにくくする工夫」です。
- 睡眠・食事・活動時間を一定に保つ
- 気分の記録をつけて、自分のリズムを把握する
- 無理に気分を上げ下げしようとせず、安定を優先する
- 信頼できる専門家とともに、長期的な視点で治療を考える
薬物療法や各種の心理療法も有効とされています。
当てはまることがあった方へ
「どうして自分だけ、こんなに気分が揺れるんだろう」と感じることがあるかもしれません。でもそれは、気分の波そのものに問題があるというよりも、その波の背景にある仕組みに気づくことができていないだけかもしれません。
双極症は、ただの気分屋ではありません。医学的にもはっきりとした特徴があり、適切な支援を受けることで生活の安定を目指すことができます。
あなたの感じている状態が、たったひとつの診断名で説明できるとは限りませんが、「このしんどさには理由がある」と気づけるだけで、少し世界の見え方が変わることがあります。
困ったときには専門家に相談をすることも大切です。 焦らず、あなたのリズムに合った方法を一緒に見つけていきましょう。