高次脳機能障害ってどんな病気?
高次脳機能障害は、病気や事故による脳への傷つきが引き起こす認知機能や行動の障害です。
高次脳機能障害にはどんな症状があるの?
高次脳機能障害の主な症状には、注意障害、記憶障害、遂行機能障害、社会的行動障害、失語症などが挙げられます。それぞれ日常場面では以下のような症状が現れることがあります。
- 注意障害
集中力が続かず、落ち着きがないように見える。
全体的にぼんやりしていて、反応や動作がゆっくりである。
一度に複数のことを同時にしようとすると混乱する。 - 記憶障害
新しい物事が覚えられない。
覚えていたことを思いだせない。
記憶の穴を埋めようとして、真実ではないことを本当のことのように話してしまう。 - 遂行機能障害
先々のことを予測することができない。
物事を順序だてて行うことができず、行き当たりばったりな行動が多い。
効率よく作業を進めることができない。 - 社会的行動障害
子どもっぽくなる、すぐに人に頼ろうとする。
感情的な制御ができず、人前での行き過ぎた喜怒哀楽の表現が目立つ。
細かいことへのこだわりが強かったり、臨機応変な対応ができなかったりする。 - 失語症
しゃべり方がたどたどしい。
相手の話が聞こえてはいるのに理解ができない。
言い間違いが多い。
他にも運動機能に問題がないのに動作が適切にできない失行や、感覚機能に問題がないのに、対象を把握できない失認などの症状がみられる場合があります。ここに挙げた以外にも様々な症状の発現が、日常生活を送ることを難しくさせてしまいます。
高次脳機能障害の原因は?
高次脳機能障害は、何らかの理由で脳が傷つく疾患から引き起こされます。その原因となる疾患は以下に挙げられます。中でも、脳血管障害が8割、次いで頭部外傷が約1割を占めています。
- 脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)
- 頭部外傷(硬膜外血腫、硬膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷)
- 脳腫瘍
- 脳炎
- 低酸素脳症
- 神経変性疾患
- 精神疾患
あいち保健管理センターが行う高次脳機能障害に対する支援
高次脳機能障害の特徴は3点挙げられるといわれています。
- 外見からは障害の有無が分かりにくい点
外見上は変化がないのに、発症によって言動が激しく変化するため、「人が変わったようだ。」と周囲の人々が混乱することがあります - ご本人自身も障害を十分に認識できない点
ご本人も知らず知らずのうちに症状が発現し、日常生活での困りごとが増えたり、周囲の人々と衝突したりすることが起こります。 - 障害が診察場面や入院場面よりも日常生活や社会活動場面で出現することが多い点
症状が医療スタッフに見落とされやすく、退院後の日常生活や社会生活においてご本人やご家族などが症状に悩まれる場合があります。
あいち保健管理センター(以下:当センター)では、このような高次脳機能障害の特徴を十分に把握した上で、ご本人様やご家族の皆様の日常や社会生活での困り感に寄り添った支援をご一緒に考えていきます。
当センターは、名古屋市指定の生活訓練・心理相談機関という特徴を活かし、ご本人様のメンタルヘルスのケアとともに、生活リズムの確立から生活管理能力の向上をご支援します。加えて、当センターにて職員や他の利用者様との協同活動を通して、社会生活技能や対人技能の向上をご一緒に目指します。
さらに、グループ会社との連携を通して就労支援、就労継続支援など幅広いニーズに合わせたご支援を提供させていただきます。
症状に振り回されることなく、ご本人様が目指す日常生活や社会生活を過ごせるように、心理師ならではの視点でご本人様の生活をご支援いたします。
【参考文献・参考URL】
緑川昌・山口加代子・三村將編(2018).臨床神経心理学,医歯薬出版株式会社.
厚生労働省.精神障害(精神疾患)の特性(代表例) 高次脳機能障害
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shisaku/jigyounushi/e-learning/seishin/characteristic.html(参照 2020-7-21)
国立障害者リハビリテーションセンター 高次脳機能障害情報・支援センター.
高次脳機能障害を理解する
http://www.rehab.go.jp/brain_fukyu/rikai/(参照 2020-7-21)
東京都医師会 高次脳機能障害について 資料編 1 358-375
https://www.tokyo.med.or.jp/docs/handbook/358-375.pdf(参照 2020-7-21)
高次脳機能障害の診断基準
厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部
国立障害者リハビリテーションセンター
診断基準
Ⅰ.主要症状等
1.脳の器質的病変の原因となる事故による受傷や疾病の発症の事実が確認されている。
2.現在、日常生活または社会生活に制約があり、その主たる原因が記憶障害、注意障
害、遂行機能障害、社会的行動障害などの認知障害である。
Ⅱ.検査所見
MRI、CT、脳波などにより認知障害の原因と考えられる脳の器質的病変の存在が確認
されているか、あるいは診断書により脳の器質的病変が存在したと確認できる。
Ⅲ.除外項目
1.脳の器質的病変に基づく認知障害のうち、身体障害として認定可能である症状を有
するが上記主要症状(I-2)を欠く者は除外する。
2.診断にあたり、受傷または発症以前から有する症状と検査所見は除外する。
3.先天性疾患、周産期における脳損傷、発達障害(神経発達症)、進行性疾患を原因とする者は除外
する。
Ⅳ.診断
1.Ⅰ〜Ⅲをすべて満たした場合に高次脳機能障害と診断する。
2.高次脳機能障害の診断は脳の器質的病変の原因となった外傷や疾病の急性期症状を
脱した後において行う。
3.神経心理学的検査の所見を参考にすることができる。
なお、診断基準のⅠとⅢを満たす一方で、Ⅱの検査所見で脳の器質的病変の存在を明らかにできない症例については、慎重な評価により高次脳機能障害者として診断されることがあり得る。
また、この診断基準については、今後の医学・医療の発展を踏まえ、適時、見直しを行うことが適当である。
高次脳機能障害者支援の手引き(改訂第2版)より引用。
【引用URL】
厚生労働省 社会・援護局障害保健福祉部,国立障害者リハビリテーションセンター編.高次脳機能障害者支援の手引き.改訂第2版(平成20年11月1日発行),2008.
http://www.rehab.go.jp/application/files/3915/1668/9968/3_1_01_.pdf(参照 2020-7-21)