Columnコラム

仕事のつまずきで自信をなくしたあなたへ。自己否定から抜け出し、次の一歩を踏み出すためのヒント

仕事のつまずきで自信をなくしたあなたへ。自己否定から抜け出し、次の一歩を踏み出すためのヒント

「前の職場で失敗続きだった自分に、もう一度きちんと働けるだろうか」「面接で自分の何を話せばいいのか分からない」「誰かに悩みを打ち明けるのも怖い」。

休職や離職を経験された方から、このようなお声をよくうかがいます。

仕事でのつまずきをきっかけに、自分に自信が持てなくなり、復職や再就職になかなか踏み出せないと感じる方もいらっしゃいます。頭では「また働きたい」と思っていても、「どうせまた同じことになる」という声が心の中で響き、動けなくなってしまう。そんなご自身を責めて、さらに苦しくなっている方もいらっしゃるかもしれません。

こうした自己否定の背景には、休職や離職を経験した方に起きやすい「考え方のクセ」が関係しています。仕事の失敗体験がなぜ強い「自己否定」につながってしまうのかを解説したうえで、次の一歩を踏み出すためのヒントをお伝えします。

なぜ仕事のつまずきが「自分はダメな人間だ」に変わるのか

職場でうまくいかないことが続くと、「自分には能力がない」「社会人として失格だ」という感覚が強まりやすくなるといわれています。しかしこれは、能力そのものの問題ではなく、出来事の「受け取り方」が偏っている状態と考えられる場合もあります。

認知行動療法では、私たちの気持ちや行動は、出来事そのものではなく、その出来事をどう解釈したかによって影響を受けると考えられています。たとえば、営業成績が伸びなかったとき、「たまたま今回は結果が出なかった」と受け取る方もいれば、「自分は社会人として通用しない」と受け取る方もいらっしゃいます。同じ出来事でも、解釈によってその後の気分や行動が変わってくることがあります。

このとき、意識せずに自然と浮かんでくる考えを自動思考と呼びます。休職や離職を経験された方の中には、仕事の場面で「どうせまた失敗する」「自分に居場所はない」といった自動思考が繰り返し浮かんでくる方もいらっしゃいます。

復職・再就職が不安な方に起きやすい考え方のクセ

自己否定につながりやすい考え方のクセは、誰にでも多かれ少なかれあるといわれていますが、強いストレスや心身の不調が続くと、偏りが強まりやすくなることが指摘されています。

「白黒思考」は、物事を完璧か失敗かの二択で考えてしまうクセです。少しでもうまくいかないと「全部ダメだった」と感じやすくなるといわれています。

「過度な一般化」は、一度の失敗を「いつもこうなる」「次もきっと同じだ」と広げて捉えてしまうクセです。前職での失敗を、これから出会うすべての職場に当てはめて考えてしまうことがあります。

「心のフィルター」は、うまくいかなかった部分だけに目が向き、できていたことが見えにくくなる状態です。5年間の勤務の中には乗り越えてきた経験も多いはずなのに、思い出されるのは失敗の場面ばかり、ということも起こりやすくなります。

「レッテル貼り」は、ひとつの行動に対して「自分はダメな人間だ」「社会人失格だ」と、自分全体に否定的な評価を下してしまうクセです。一つの失敗は、あなたという人間のごく一部の出来事に過ぎないと考えられています。

こうした考え方のクセは、そのままのあなたの姿というよりも、心身が疲れているときに誰にでも起こりうる一時的な反応のひとつと考えられています。

自己否定の悪循環から抜け出すための3つのステップ

考え方と行動の両面から働きかけることで、こうした悪循環が和らぎやすくなるといわれています。ここでは、心理師と一緒に取り組むことを前提に、基本となる3つのステップをご紹介します。一人で抱え込まず、専門家のサポートを受けながら進めることが望ましいとされています。

ステップ1 浮かんだ考えを書き出し、別の見方を探す

つらい気分になったとき、その瞬間に浮かんだ考えをノートに書き出してみましょう。たとえば、求人情報を見て不安になったとき、「自分には無理だ」という考えが浮かんだとします。まずはその考えをそのまま文字にしてみるだけでも、頭の中のぐるぐるから少し距離を取ることができます。

次に、その考えと矛盾する事実や別の可能性がないかを探してみます。「5年間勤めてきた経験がある」「前職でも任された仕事はあった」「体調が整えば集中できる日もある」など、見落としていた事実に目を向けてみるのです。目的は無理にポジティブに書き換えることではなく、現実に即した幅のあるものの見方に気づくきっかけをつくることにあります。

ステップ2 「試してみる」小さな行動実験

自己否定が強いと、「どうせうまくいかない」と予測して行動を避けてしまいがちです。しかし行動を避けていると、予測を確かめるチャンスがないまま、「やっぱり自分にはできない」という感覚だけが残ってしまいます。

この予測を実際に確かめてみる方法は、行動実験と呼ばれています。たとえば「話しかけても相手は迷惑がるはず」という予測があるなら、実際に短く挨拶をしてみて、相手の反応を観察します。「自分が電話をすると失礼なことを言ってしまうはず」という予測があるなら、短い問い合わせの電話を一本かけてみる、といった具合です。

思い込みと違う結果が得られた場合、それが「自分はダメだ」という考えを見直すきっかけになることがあります。最初から大きな場面で試す必要はなく、近所のお店で店員さんと一言話す、家族にお願いごとを伝えてみるなど、小さな場面から始めてみるとよいといわれています。うまくいかなかったときも「失敗」ではなく、「新しく分かったこと」として次に活かしていける場合もあります。

ステップ3 「できたこと」を毎日記録する

一日の終わりに、その日にできたことを3つ書き出してみましょう。「決まった時間に起きられた」「散歩に出た」「家族に話しかけられた」など、どんなに小さなことでも構いません。自信を失っているときは、できていることに目が向きにくくなることがあるといわれています。意識的に記録することで、心のフィルターで見えにくくなっていた部分に気づきやすくなる方もいらっしゃいます。

一人で抱え込まず、心理師と一緒に取り組むという選択

考え方のクセや自動思考に自分だけで気づくのは、実はとても難しいものだといわれています。長年積み重なったパターンほど、自分にとっては「当たり前」になっていて、疑問を持ちにくいからです。また、自己否定が強い状態で一人で取り組もうとすると、「うまくできない自分」をまた責めてしまう悪循環に陥ることもあるようです。

認知行動療法は、心理師とクライエントが協力しながら、困っている場面を一緒に整理し、新しい見方や行動を試していく心理療法のひとつです。一方的にアドバイスを受けるのではなく、ご自身のペースで問題に向き合えるよう、対話を重ねていきます。支援者がいなくてもご自身で対処しやすくなるよう取り組んでいく点も、この療法の特徴のひとつといわれています。

当センターでは、公認心理師がおひとりおひとりの状況に合わせて、復職や再就職に向けた準備についてのご相談をお受けしています。ご自身の特性について一緒に考えたり、向いている働き方を整理したりするお手伝いもさせていただいております。

「自分のことをうまく話せるか不安」「何から相談すればいいか分からない」という段階の方にもお越しいただいています。当センターでは初回カウンセリングを無料で行っておりますので、ご検討の参考にしていただければと思います。ご自身のペースで進めていただける場としてご活用いただけましたら幸いです。

引用元・参考文献

  1. うつ病の認知療法・認知行動療法 治療者用マニュアル|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf
  2. うつ病の認知療法・認知行動療法 患者さんのための資料|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf
  3. 心の健康|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/kokoro/index.html
  4. 認知行動療法の共通基盤マニュアル|日本認知療法・認知行動療法学会
    https://jact.jp/manual/

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