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Columnコラム

ストレスによる疾患:適応障害とは何か?

ストレスによる疾患:適応障害とは何か?

ストレス社会と適応障害

適応障害とは

最近残業が多くて体や気持ちがしんどくなってきた、
部署が変わってからストレスを感じる、
上司に怒られてから仕事に行くのが怖くなってきた、
ストレスを感じやすく一つの職場で長く働けたことがない…

クリニックに行ってみたら「適応障害」という診断がついたという方の中には、こうした経験のある方が多いかもしれません。

「適応障害」とは、周囲の環境にうまく適応できずストレスを感じてしまい、またそのストレスに対処することができず、気分の落ち込みや不安、悲しさ、苛立ち、集中力の低下、睡眠リズムの悪化などの症状が生じる疾病です。

日常生活でのストレスの症状

日常生活の中で、人間がストレスなく生活するというのは難しいことです。
例えば昇進・昇格や結婚、出産、引越し、希望に叶う部署異動など、自分にとっても望ましいことであっても環境の変化はそれだけでストレスになります。

しかし、幸せな変化であればストレスの負の部分よりも、「よし頑張ろう!」と前向きな気持ちになりやすく、負荷を前に向くエネルギーに変えることができます。

一方で、仕事のミスや上司からの叱責、望まない部署異動、度重なる残業、転勤や退職、家庭内の不和やプライベートでのうまくいかなさなど、生活していく中では時にはネガティブなストレスがかかることもあります。

このストレスに耐え切れなくなった時や対処方法が分からなくなった時に、気分の落ち込みや不安、悲しさ、苛立ち、集中力の低下、睡眠リズムの悪化などうつ病によく似た症状が出てきます。

これが「適応障害」の症状です。

 適応障害の原因

適応障害とうつ病は、症状はよく似ていますがその持続の仕方に違いがあります。
適応障害の場合は、ストレスの原因がなくなったり、その環境から離れることで症状が改善していきます。
適応障害の診断基準の中には、

  • 「はっきりと確認できるストレス因」があること
  • そのストレス因の始まりから3カ月以内に情緒面または行動面の症状が出現すること

が挙げられています。

つまり、何かしら明確なストレスとなる出来事があり、その後徐々に調子が悪化して抑うつ状態を呈する、という発病の仕方がほとんどです。

一方で、そのストレスフルな環境から距離を取ると(例えば短期間だけ休むなど)、一次的に快復することもあります。
しかし、それはあくまでもストレスフルな環境から離れたときだけです。
再び同じ環境に身を置くと、同じ症状を再発させてしまうことになります。
こうして再発を繰り返してしまうと、仕事に対する自信や周囲からの信頼も損なうことになりかねません。

効果的な治療法

薬物療法

残念ながら、「適応障害」に効果が明確にあると言われている薬物はまだありません。
ただ、抑うつ気分、眠れない、不安があるなどの様々な症状に対して一定の効果のある薬があるため、それらの症状に合わせた薬を処方されることが一般的です。

カウンセリング

適応障害の治療にはカウンセリングが最も適していると言われます。
もちろん、ストレスフルな環境から遠ざかるのが最も簡単な治療法ではありますが、常にその手段を取ることができるわけではありません。
そういった場合、認知行動療法などを中心としたカウンセリングを行い、

  • 自分にとってはどのような状況がストレスなのか
  • なぜその状況をストレスだと感じてしまうのか
  • そのようなときにどうやって対処したらよいのか

などを共に考え、ストレスフルな社会の中ですこしでも楽に生きるための方法を身に着けます。

適応障害の方におすすめなあいち保健管理センターのプログラム

  • リラクゼーション:緊張場面などで自分の体の反応をコントロールできるようトレーニングします。
  • IMR:自分にとってどのような場面がストレスになるかを同定し、日常的にできる対処法を考えます。
  • 認知再構成法(集団認知行動療法):ストレスを感じてしまう考え方の幅を広げます
  • パフォーマンスマネジメント:ご自身の望まない結果になりやすい行動パターンを明らかにし、より良い結果になるような行動の工夫を考えます
  • ACT:不快な感情を避けたり取り除いたりするのではなく、うまく付き合ってご自身がより豊かな生活を送るための方法を身に着けます。

適応障害の診断基準

A. はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現
B. これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある。
(1) そのストレス因子に暴露されたときに予想されるものをはるかに超えた苦痛 
(2) 社会的または職業的(学業上の)機能の著しい障害
C. ストレス関連性障害は他の精神疾患の基準を満たしていないこと。
 すでに精神疾患を患っている場合には、それが悪化した状態ではない。
D. 症状は、死別反応を示すものではない
E. そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない


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