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双極症と季節は関係するか?

双極症と季節は関係するか?

季節の変わり目になると、気分の波が大きくなると感じる人がいます。特に、春や秋になると気持ちが高ぶったり、逆に冬になると気分が落ち込んだりするなど、気分の変化と季節との関係を実感する方も少なくありません。

双極症を持つ人にとって、この「季節の影響」は無視できない要素であり、実際に多くの研究でも注目されています。今回は、双極症と季節との関係について、科学的な視点から解説していきます。

季節が双極症に与える影響とは

双極症は、気分が高揚する躁状態と、気分が沈むうつ状態を繰り返す精神疾患です。こうした気分の変動には、ストレスや生活習慣、人間関係など様々な要因が関係していますが、その中に「季節の変化」も含まれることがわかってきています。

とくに多く報告されているのが、春先や初夏に躁状態が現れやすく、秋から冬にかけてうつ状態に移行しやすいという傾向です。これは一部の患者さんに限らず、双極症のある人に広く共通して見られる特徴として、多くの臨床報告に裏付けられています。

こうした季節による影響は、単なる気分の「気まぐれ」ではなく、脳の働きや体内リズムと深く関係していると考えられています。

体内時計と概日リズムの関係

双極症の季節性を説明する重要な鍵の一つが、「概日リズム」と呼ばれる体内時計のしくみです。人間の脳には、朝に目覚め、夜に眠くなるというリズムをつくる仕組みが備わっており、これは主に視床下部にある視交叉上核という部位が調整しています。

この体内時計は、日光の量や時間に影響を受けるため、季節の変化がリズムの乱れにつながることがあります。春や夏には日照時間が長くなるため、脳の活動が高まりやすく、それが躁状態の引き金になると考えられています。一方で、日照時間が短くなる秋や冬には、セロトニンやメラトニンなどの神経伝達物質の働きが変化し、気分が落ち込みやすくなることがわかっています。

つまり、双極症のある人は、この体内リズムの変化に敏感であり、それが季節ごとの気分の揺れとして現れるのです。

予防とセルフケアの視点

こうした季節の影響を完全に避けることは難しいかもしれませんが、予測できるからこそ対策を立てることが可能になります。たとえば、春に入る前に睡眠と生活リズムを整えておくことや、秋に入る前にうつ状態への備えをしておくことが挙げられます。

また、日光に当たる時間を一定に保つ、決まった時間に起きて寝るなど、生活のリズムを安定させる工夫は、気分の波を穏やかに保つために役立ちます。医師と相談しながら、気分の変化に合わせた服薬調整やサポート体制を整えることも大切です。

日記やアプリなどを使って、自分の気分の変動と季節の関係を記録しておくことで、早めに変化に気づきやすくなり、無理のない対応がしやすくなります。

まとめ

双極症と季節の変化には密接な関係があり、とくに日照時間や体内リズムの変化が気分の波に影響を与えていると考えられています。こうした季節性を理解することで、先回りした対策や日々の生活習慣の見直しがしやすくなり、再発や悪化を防ぐ助けになります。

自分のリズムを把握し、季節ごとの備えを少しずつ取り入れていくことが、安定した生活につながっていきます。焦らず、自分のパターンを理解していくことから始めてみましょう。

当てはまることがあった方へ

季節の変わり目に気分の揺れを感じることは、双極症の方にとって決して珍しいことではありません。もし、気分の波が生活に影響を与えていると感じた場合には、早めに専門家に相談することをおすすめします。季節の変化を理解し、少しずつ対策を取り入れることで、心と体の安定を支えることができます。

変化を先読みし、自分に合った工夫を重ねながら、自分のリズムを尊重した一歩を踏み出してみましょう。


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