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社交不安障害

「人前に出るのが,こわい…!!」

 初対面の人との出会いや知り合いとの雑談、会議での報告、人前での飲食など、人と関わる場面や人前で何かする場面に対して強い不安や恐怖、心配を感じたことはないでしょうか。また、そうした場面で「恥をかくに違いない…」「拒絶されるに決まっている…」「絶対に相手に迷惑をかけてしまう…」「いつも相手を不快にさせてしまう…」などの考えが頭から離れなくなってしまったことはないでしょうか。

 人との関わりの中で不安や恐怖などのマイナスな気持ちを感じることや、ネガティブな考えが浮かんでくることは自然なことで、誰もが経験しうることです。ですがこうした気持ちや考えが強すぎる場合、『社交不安障害』という心の状態になってしまっているかもしれません。

社交不安障害とは?

社交不安障害は、人の視線を浴びる可能性のある様々な社交場面に非常に強い不安や恐怖を感じ、『どうしても避けてしまうことで生活や職業場面で大きな支障を生じている状態を表す精神疾患です。ここでいう『社交場面』というのは他の人と話雑談することや討論をすることなどの積極的に交流する場面に加えて、人前で食事をすることやスピーチをすることなどの、他の人の視線を浴びながら何かをする場面も含まれます。

 社交不安障害は一般的に思春期前後に発症することが多く、有病率はおよそ13%とされ、決して珍しい病気ではありません。一方、治療せずに放置しておくと多くの場合は強い不安が持続し、他の不安障害やうつ病、アルコール依存症を併発してしまうこともあります。

社交不安障害の特徴は?

 社交不安障害の特徴は、大きく分けると4つの側面から紐解くことができます。その4つとは、『感情』『考え』『生理的な体の反応』『振る舞い』です。

 感情の側面の特徴はやはり、社交場面に対する不安や恐怖、心配です。同じ社交不安障害でも不安を感じる場面は人によって異なることも多いことが分かっています。たとえば社交場面であればほとんどの場面に対して強い不安を感じる『全般型』とよばれるタイプの人もいれば、特定の社交場面だけに強い不安を感じる『限局型』とよばれるタイプの人もいます。

 考えの側面の特徴は、「人前で何かをすると、周りの人から否定的な評価を受けるにちがいない」というものが典型的です。否定的な評価とは、たとえば「笑われる」「バカにされる」「弱みを握られる」「嫌われる」「つまらない人間だと思われる」「ダメな人間だと思われる」などです。他にも、自分が不安を感じていることが相手に伝わってしまうことを強く予感したり、自分の言動がその場を台無しにしたり相手を不快にさせるのではないかと考えて心の負担が大きくなってしまう場合もあります。さらに、「不安を感じてはいけない」「不安はゼロでないといけない」というような考えが強くて心に必要以上の負荷をかけてしまうこともあります。

 生理的な体の反応の側面では、汗がたくさん出てきて止まらない、胸が苦しくなる、息が苦しくなる、体に勝手に力が入って固まってしまう、手足が震える、トイレに行きたくなる、吐き気がする、気が遠くなるなどの反応が強く現れるといった特徴があります。

 振る舞いの側面の特徴は、不安を感じやすい場面をあらかじめ避けることが代表的です。誘いを断ったり、欠席することなどがこれにあたります。また、不安を感じる場面には出向くものの、その場で不安を和らげるための振る舞いにエネルギーを使いすぎてしまうこともあります。その場で不安を和らげる振る舞いとしては、目立たない場所にいる、言いたいことがあっても黙っておく、反論されないよう矢継ぎ早に話す、視線をそらす、マスクや眼鏡で顔を隠す、あえて余裕があるような振る舞いをする、などがあげられます。

『社交不安障害』と『内気な性格』はどう違うの?

 ここまでみてきた4つの側面の特徴ですが、これらが『ある』ということは問題ではありません。不安や恐怖を感じることで危険から身を守れることもありますし、この先起こりうるネガティブな結果を事前に考えることでトラブルを防げることもあります。生理的な体の反応は、実は危険に対処するための体の準備状態を整えてくれる働きがあります。もちろん、不安や恐怖、体の反応を感じたり、考えに沿って振る舞うことが自分を守る結果につながることもあります。

 社交不安障害として問題になるのは、こうした4つの側面の特徴が、日常生活や職業生活をストップさせるほど強くなってしまっているときです。つまり、社交不安にまつわる特徴が『あるかないか』ではなく、『どれくらい強くなっているのか』という視点でとらえることがポイントです。社交不安の特徴がある中でも大きな支障なく生活を続けることができているならば、社交不安『障害』というよりも、社交不安『傾向』であったり、内気な『性格』と判断できそうです。

 社交場面にまつわる『感情』『考え』『生理的な体の反応』『振る舞い』が、社会生活をストップさせてしまうほど強くなっている状態が社交不安障害です。それではこの精神疾患にかかったとき、どのように回復に向かっていくのでしょうか。大きく分けると、2種類の治療法があると言われています。それは、薬物療法と心理療法(精神療法)です。

社交不安障害の薬物療法

 社交不安障害に対する薬物療法では、抗うつ薬であるSSRIという種類の治療薬や、ベンゾジアゼピン系抗不安薬、β遮断薬などが活用されます。

SSRIはおもにうつ病の治療に使われていますが、社交不安障害にも有効性が確認されています。服薬を始めてから効果を実感できるようになるまでに数週間かかることや服薬して間もないころには副作用の方が目立ってしまうなどのデメリットもありますが、依存性がほとんどなく長期的には安定して不安を和らげる効果が期待できるという大きなメリットがあります。

ベンゾジアゼピン系抗不安薬の特徴は即効性があることで、服薬から比較的短時間で不安を和らげることができます。こうした特徴があるため、ここぞのときの頓服として活用されることが多いようです。その一方で依存性があり、使い方を誤ると服薬をやめられず、抗不安薬がないと不安で仕方ないというような、薬に振り回される生活になってしまう危険もあります。

β遮断薬は、不安に伴う動悸や息切れ、手足の震えなどの過剰な体の反応を和らげる効果が期待できると言われています。

社交不安障害の心理療法(精神療法)

 心理療法には様々な種類がありますが、その中でも社交不安障害への有効性が科学的根拠に基づいて確認されているのが、認知行動療法です。社交不安障害に対する認知行動療法の中には様々な要素が含まれます。過剰な体の生理的な反応を和らげることを目的としたリラクセーション法や、不安を必要以上に大きくしてしまう考えを和らげるための認知再構成法や行動実験といった要素があります。また、不安を感じる社交場面にあえて飛び込んで、不安に馴れる練習をするエクスポージャー(曝露法)という要素もあります。他にも、人と関わるスキルを磨くためのソーシャルスキルトレーニング(社会的スキル訓練)や、相手の意見や考えを尊重しながら自分の考えも伝えるスキルを磨くことを目指すアサーショントレーニング(主張訓練)という要素もあります。これらの要素を自分の症状に合わせて選んで実践し、自分なりにアレンジすることを通して、対人場面への不安や恐怖とうまく付き合えるようになることを目指します。

薬物療法と心理療法はどっちがいいの?

 社交不安障害の治療法には薬物療法を心理療法がありますが、どちらの方が優れている、ということはありません。一般的には、薬物療法は即効性が高く、心理療法は再発予防効果が高いとされています。

このようにそれぞれに強みと弱みがあるため、自分の症状や好みに合わせてバランスをとっていくこともできます。たとえば、非常に強い不安を感じやすく問題になってしまう社交場面が限られている方の中には、問題になる場面だけ治療薬の力を借りるという形で、薬物治療だけで治療を進める場合があります。また、向精神薬の服用に抵抗感があり、症状が比較的落ち着いている方の中には、心理療法だけで治療を進めることがあります。もちろん、薬物療法と心理療法を合わせて活用しながら治療を進める方もいます。

あいち保健管理センターでは、どんな支援に参加できるの?

 あいち保健管理センターには、認知行動療法を専門としている支援スタッフが複数名所属しています。そうしたスタッフとの個別カウンセリングを通して、自分に合った、社交不安との付き合い方をじっくり探求することができます。

また、当センターでは、社交不安障害の診断を受けた方や社交不安傾向が強い方を対象とした、認知行動療法に基づく集団心理療法のプログラムを2020年7月にスタートしました。このプログラムでは、社交場面への不安に困っている利用者様が、お互いに励まし合いながらそれぞれの不安を乗り越えていくことを目的にしています。

 「自分の抱えている社交不安と向き合っていきたい!でも、一人で進んでいくには不安が大きすぎる…」という葛藤の中でなかなか一歩踏み出せずにいる方は、ぜひ一度あいち保健管理センターにご連絡ください。

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