2019年11月22日に中華人民共和国湖北省武漢市で初めて検出された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、
瞬く間に世界各地に感染が拡大し、パンデミックの様相を呈しています。
日本国内でも2020年1月にはじめて感染が確認され、同年2月16日には、日本で初の死者が確認されました。
政府は2月26日に全国のイベントの中止・縮小を要請し、
2月27日には全国の学校に休校を要請。
3月1日には、密閉空間・密集場所・密接場面(三つの密)を避けることで、自己の感染を回避すると共に、
他者に感染を拡大させないよう広く国民に協力を呼びかけています。
政府は、4月7日に緊急事態宣言を発令。
4月16日には緊急事態宣言が全国に拡大され、
5月4日には、政府は期限が同月6日までだった緊急遺体宣言を31日まで延長するという方針を発表しました。
新型コロナウイルスにまつわる外出の自粛や環境の変化は、長期化するにつれて、精神的な不調が起こるリスクを高めます。
感染拡大による恐怖に加え、自粛による環境の変化や、経済的な不安によって心のエネルギーが枯渇することで、
抑うつ気分や意欲の低下など、コロナうつ病を発症する危険性も孕んでいます。
新型コロナうつ病
新型コロナうつ病は、正式な病名ではありません。
新型コロナウイルスに関連した不安や恐怖、環境の変化がストレスになって、うつ症状を呈する人を総称して【コロナうつ病】と呼んでいます。
本来、不安や恐怖の感情は人間が生存するために必要なものだとされています。
不安や恐怖の感情が生じると、体内からアドレナリンが分泌され、心拍数や血圧上昇し、
戦うか逃げるか(闘争・逃走反応)という行動を起こす準備をします。
現代社会においても、不安や恐怖があるからこそ、私たちは危険な状況を避けることができ、
失敗しないよう事前に準備をすることで、リスクを最小限にすることができるのです。
しかし、そのような不安や恐怖の感情も、その状況に相応しくないほど強くなってしまうと問題が生じます。
また、新型コロナウイルスに関連する不安は、未知のウイルスに対する感染の不安だけでなく、感染を避けて自粛する生活が長期化することで、
先行きが見えない経済的な不安や焦りなどものしかかっています。
完全失業率と自殺率は、強い相関関係があり、失業率が1%増えると自殺者は2000人以上増えると言われています。
このように、長期にわたる過剰な自粛は、日本経済を悪化させ、うつ病の発症リスクを高め、自殺者の増加にも繋がりかねません。
しかしながら、マスコミの自殺報道は、その報道に影響されて後追い自殺が増えることが議論されているため、
コロナが収束して、統計によって全貌が明らかになるまでは、大々的に報道されることはありません。
行動科学の知見でも、不安という感情は、不適切な回避行動をとればとるほど、ますます大きくなると考えられています。
コロナの感染リスクをゼロにしようと警戒を超えた自粛をすればするほど、
短期的には急速に安心感を得られるかもしれませんが、
長期的には、日々の生活の中でコロナ感染の不安はますます大きくなってしまいます。
また、自粛生活の長期化は、二次災害として経済的な危機を招きかねず、先行きの見えない漠然とした経済不安や社会不安が大きくのしかかってくることに繋がります。
新型コロナウイルスは、私たちのこれまでの日常生活を大きく変化させました。
学校が臨時休校になったことで、シングルマザーや共働きの家庭は、子どもの居場所の確保に奔走することになり、
緊急事態宣言後は、企業が自宅での勤務を推奨したことで、在宅ワークが急速に拡大。
在宅ワークを歓迎する人がいる一方、
仕事とプライベートのオンとオフの切り替えが難しかったり、
子どもの世話をしながらの在宅ワークで仕事がはかどらなかったり、
一人暮らしの社員が孤独感に苛まれたりと、
精神的なストレスを溜め込んでしまいがちです。
中には、在宅ストレスでイライラして家族に暴力を振るうドメスティックバイオレンスが深刻化する事例や、
断酒していたアルコール依存症の人が再飲酒に走る【コロナスリップ】という事例も見られます。
在宅ワークで精神的に疲弊しつつも、休日も外出自粛を求められ、
世間では自粛しないことがあたかも悪であるかのような風潮が生まれ、人々は気分転換の散歩すらままならず、
次第にメンタルが追い詰められていっています。
もはや、ほとんど全ての国民が、コロナ不安やコロナうつの、高リスク群だと言えるかもしれません。
新型コロナうつにならないために
では、新型コロナうつにならないために、私たちは何ができるでしょうか?
ひとつには、マスコミによる過剰でネガティブなコロナの情報を制限して、
ネガティブな情報だけではなくポジティブな情報にも目を向けて「正しく」不安がることです。
コロナによる生じるあたり前の不安は正しく受け止め、その上で、コントロールできることと、できないことをしっかりと区別し、
心身共に健康的な規則正しい生活を送ることが大切です。
まずは、ネガティブな情報を制限して、真偽が定かではないコロナ情報に巻き込まれてパニックになることから距離を置くことが大切です。
コロナ情報に巻き込まれ、踊らされてパニックになっている自分に気づくことで、次第に現在の状況にどう対処するかが見えてきます。
5月5日現在、日本における新型コロナウイルスの感染者は15253人、死亡者は556人と報道されています。
死亡者の大半は基礎疾患を持った高齢者ですが、高齢化社会の日本では、新型コロナウイルスでなくても、毎年2~3万人の高齢者が亡くなっています。
新型コロナウイルスは、無症状者や軽症者が8割を占め、公表されている感染者数は、発症したことが分かっている人だけが対象であるため、
致死率は、季節性のインフルエンザと同等かそれ以下であると考えられています。
ですので、私たちはいたずらにパニックになるのではなく、例年の季節性インフルエンザと同様に正しく不安がることで、
手洗いやうがいなど、できることをしっかりと行うことが大切です。
その上で、緊急事態宣言中の在宅ワークでは、生活リズムを崩さず、規則正しい生活を送ることが大切です。
朝の起床時間を一定にして、午前中はベランダなどに出て、目から光を取り入れることで、生活リズムを整えます。
3食の食事、計画的な仕事のオンとオフのきりかえも大切になります。
散歩などの適度な運動や趣味などのリラックスできる活動は、心身の健康を維持する上でも重要です。
できれば、就寝する2時間前には入浴をして、夜更かししすぎないなど、規則正しい日常生活を心がけましょう。
特に、睡眠リズムの乱れは、うつ病のリスクを高めるので注意が必要です。
先行きの見えない状況ではありますが、新型コロナウイルスが収束する日は必ずやってきます。
自分の努力で変えられることに目を向けて、できるだけ楽しく穏やかな日常を過ごせるように心がけましょう。
屋内でできることや、これまでにやったことのなかった楽しめる活動を探してみましょう。
コロナ騒動が収束して、今のつらい現状を乗り越えたときにやりたいことなど、明るい将来の計画に目を向けるのもいいかもしれません。
コロナ疲れや、先行きの見えないコロナ不安でストレスを溜め込んでいるのは、あなただけではありません。
一人暮らしの人などは、孤立した日常生活の中で、あれこれと先々のことをネガティブに考えてしまいがちです。
もし、頭の中であれこれ考えて、引きこもりがちな生活を送っているようなら、
家族や友人とコミュニケーションをとったり、SNSで連絡をとったりすることも大切です。
それでも気持ちが晴れないようなら、メンタルヘルスの専門家にご相談下さい。
あいち保健管理センターでは、利用者様に安心してご利用していただけるようコロナ感染対策を行なっています。
手洗い、マスク、アルコール消毒、白衣着用の他、
相談室では、次亜塩素酸空気清浄機で空間除菌を徹底しています。
それでも感染が気になる人のために、3密にならない屋上や屋外でのカウンセリングも実施しています。
自分がコロナ疲れやコロナうつに陥っているのではないかと思った方は、あいち保健管理センターのスタッフにご相談下さい。
うつ病や不安障害(不安症)などにエビデンスのある認知行動療法を専門とした公認心理師によって、
コロナうつ病に対する予防や回復をサポートすると共に、
コロナに左右されない価値ある人生や生き生きとした日常生活を取り戻すことができるよう支援致します。
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