「初めてのカウンセリング、自分にちゃんとできるだろうか」。心理職としての一歩を踏み出す前に、そんな不安を抱く人は少なくありません。
けれど、思い出してみてください。いま何百ものケースに向き合う先輩も、学会で堂々と発表する指導心理師も、はじめは同じ「新人」でした。「話を聞くプロ」も、最初はみんな新人だったのです。その差を分けるのは、才能や運ではなく、「どんな環境で、どう育つか」だと私たちは考えています。だからこそ、当センターは「育てる仕組み」に本気で投資してきました。これからお話しするのは、新人がやがて誰かの先輩になるまでを支える、当センターの研修制度の話です。
当センターでは、公認心理師(以下、心理師)としてキャリアを積むための独自の心理師臨床研修プログラム「Resident(レジデント)制度」を整えています。「何を・どの順番で・どこまで学ぶか」を丁寧に体系化することで、一人ひとりが着実に成長していける仕組みです。
私たちが大切にしているのは、「優秀な人を採用する」ことではありません。一緒に働きながら、優秀な心理師へと育っていける環境をつくること。それが、このResident制度の根底にある考え方です。
Resident制度とは?
Resident制度は、認知行動療法(CBT)を中心とした心理支援を、再現可能な形で実践・教育できる心理師を育てるための、段階的な教育の仕組みです。
当センターでは、心理師を「生まれつきの才能や運で決まる専門職」とは考えていません。教育・実践・研究を通じて、誰もが継続的に成長できる。その成長を支える仕組みがResident制度です。
Resident制度が目指す心理師像は、次の3つです。
- 実践家として、質の高い心理支援を届けられる心理師
- 科学者として、研究の知見を理解し、臨床に活かせる心理師
- 教育者として、後輩を育て、専門性をつないでいける心理師
カウンセリング技術だけを磨くのではなく、ケースフォーミュレーション・行動分析・学会活動・スーパービジョン・教育・組織運営まで、「心理師として社会へ還元する力」を総合的に育てていきます。
4つのステップで段階的な成長を目指す
入職からスーパーバイザー(指導心理師)になるまでを、4つのSTEPで設計しています。焦らず確実に、一段一段登っていける構造となっています。

STEP01 Resident(臨床研修)
まずは、基礎をじっくり育てる2年間
入職後の2年間は、とにかく丁寧に基礎を積み上げる時期です。「いきなり一人でやって」ということはありません。基礎臨床とケースフォーミュレーションについて、下記のような経験を積みながらじっくりと学びます。
- 毎日の業務・臨床振り返り
- 1日1回以上のケース陪席
- 振り返りロールプレイ(RP)・個別シナリオRP
- 症例検討・ケースカンファレンス
- 外部スーパービジョン(SV)
- 文献抄読
- 日本認知行動カウンセリング協会主催「認知行動療法専門コース」受講
(受講費用はセンター全額負担/出勤扱い)
CBT体系研修について
Residentの間は、日本認知行動カウンセリング協会が主催する認知行動療法専門コース(年間90時間)を受講します。
この年間90時間におよぶ専門コースの受講費用は、すべてセンターが全額負担します。しかも受講は受講日は勤務扱い(出勤扱い)で、休日にあたる場合も代休を取得できるため、自費で・休日を返上して学ぶ必要はありません。安心して学びに集中できる体制を整えています。
このコースでは、
- 認知行動療法の面接法
- うつ病の認知行動療法
- 行動分析学の基礎と臨床実践
- アセスメント技法と評価方法
- 発達障害の就労支援と認知行動療法
- 不安症・強迫症の認知行動療法
- 依存症の認知行動療法
- ACT・CBS(文脈的行動科学)
- 困難事例のケースフォーミュレーション
などを体系的に学びます。
「なぜその支援をするのか」「どんなエビデンスが背景にあるのか」を理解しながら専門性を高めていきます。
STEP02 後期研修(Fellow)
専門性を深め、範囲を広げる2年間
基礎がしっかり身についたFellowは、より高度な実践と、社会への発信が主役になる時期です。
- 学会発表・研究活動
- 集団療法の主担当
- 外部機関との連携
- ケースレビュー
- 若手教育の補助
- 公認心理師の会 専門公認心理師資格の取得
- 日本認知・行動療法学会 認知行動療法師資格の取得
個別カウンセリングの主担当として自分の足で立ちながら、学会発表や研究活動を通じて「社会に届ける力」を育てていきます。
STEP03 SV(スーパーバイザー)訓練
「臨床家」から「教育者・管理職」への橋渡し期間
SV訓練の時期は、自分が「教える側」になる経験を積む段階です。
- Residentの教育・ケース指導
- 集団療法の監修
- ケースレビューの運営
- 医療・福祉との連携
- KPI理解・組織運営
後輩の成長に関わりながら、組織を動かす視点も少しずつ身についていきます。
STEP04 指導心理師(スーパーバイザー)
次の世代を育てる、当センターの要
指導心理師は、Resident制度全体を動かす中心的な存在です。Resident・Fellowの教育、ケースレビュー、スーパービジョン、集団療法の監修、支援品質の管理、プログラム監修、組織運営など、幅広い役割を担いながら、専門職育成の文化をつないでいきます。
現在、当センターには次の指導心理師が在籍しています。
- 三上勇気
- 長儀拓
- 福本拓実
- 寺脇藍
- 鬼頭邦彰
- 服部正嗣
- 船木省吾
Resident制度の特長
「一人じゃない」と感じられる、内部サポート体制
当センターでは、日常臨床をしっかり支える内部の仕組みが整っています。
- 個別SV
- ケース陪席
- 振り返りロールプレイ(RP)
- ケースレビュー
さらに、スーパーバイザーとは別に「メンター制度」もあります。先輩スタッフが一対一で、日常業務・臨床・キャリアについて継続的に寄り添ってくれます。「誰に相談すればいいんだろう……」という孤独感を感じにくい環境です。
多様な専門領域を学べる、外部専門家体制
Resident制度を支えているのは、内部のスタッフだけではありません。認知行動療法・行動分析学・行動医学・精神科臨床・研究法など、多様な専門領域で活躍する外部の専門家から、継続的な指導を受けられます。
| 氏名 | 所属 |
|---|---|
| 原井宏明 | 原井クリニック 院長 |
| 坂井誠 | 元中京大学 教授 |
| 石川信一 | 同志社大学 教授 |
| 古川洋和 | 鳴門教育大学 准教授 |
| 首藤祐介 | 立命館大学 教授 |
| 岩野卓 | 福島県立医科大学 博士研究員 |
| 青木俊太郎 | 福島県立医科大学 助教 |
ゼミ式SVや個別SVを通じて、現場の経験と学術の知見をつなぐ学びが得られます。
幅広いケースを経験できる
当センターでは、多くの方にご利用いただいており、さまざまな領域のケースを経験できます。
| 領域 | 主な対象 |
|---|---|
| 気分症群 | うつ病・双極症・適応反応症 など |
| 不安症群 | 社会不安症・パニック症・全般不安症 など |
| 強迫症群 | 強迫症・確認行為・洗浄強迫 など |
| 発達症群 | ASD・ADHD・発達症と気分症の併存 など |
| トラウマ関連 | PTSD・複雑性PTSD・ハラスメント被害 など |
| 依存症群 | アルコール・ギャンブル・ゲーム依存 など |
| 復職・就労支援 | 休職者リワーク・就労移行・就労定着 など |
| 地域生活支援 | 期ひきこもり・社会的孤立・自立訓練 など |
当センターでは「症状が改善したか」だけでなく、「その人が望む人生にどれだけ近づけたか」を大切にしています。医療・福祉・就労・地域生活を横断した支援を経験することで、より広い視野を持った心理師へと育っていけます。
新卒のうちからこの横断的な視点を養えるため、幅広いフィールドで力を発揮できる心理職へと成長していけます。
学会・研究活動への参加を応援
当センターでは、学会活動を継続教育の一部として大切にしています。
- 日本認知・行動療法学会
- 日本行動医学会
- 公認心理師の会
への継続参加を推奨しており、学会発表や学会運営への参加は出勤扱いです。
最初のResident段階から学会参加や症例発表にチャレンジできるのも、当センターならではの特徴です。学会発表は「実績づくり」のためではなく、ケース定式化・行動分析・文献とのつながり・支援の再現性を深める、大切な学びの機会として位置づけています。
教育委員会による品質の見直し・改善
Resident制度・SV体制・指導心理師育成の品質を守るために、教育委員会を設置しています。
- 外部委員8名(大学教員・医師・研究者)
- 内部委員4名
- 月2回(年間24回)開催
- 任期2年
CBT教育カリキュラム・スーパーバイザー基準・ケースレビューのあり方など、制度全体を継続的に見直し・改善しています。根拠を持って育てる組織であるための、大切な仕組みです。
Resident制度の実績
| 指標 | 実績 |
|---|---|
| 心理職 | 38名 |
| 指導心理師 | 7名 |
| SV訓練 | 4名 |
| Fellow | 16名 |
| Resident | 11名 |
| 教育委員会開催 | 年間24回 |
| 採用倍率 | 3倍以上(前年度4.4倍) |
| 心理職離職率 | 3%以下(直近3年間) |
心理職の離職率が3%以下。この数字は、「長く、安心して働き続けられる環境かどうか」を示す一つのバロメーターだと思っています。これだけ濃密な研修も、陪席・ロールプレイ・症例検討・スーパービジョン・CBT専門コース・学会活動まで、その多くが業務時間内のスケジュールとして組み込まれています。「学びは持ち帰りで」「研修はサービス残業で」を前提にした制度ではありません。だからこそ、しっかり学び続けながらも無理なく働き続けられる。その積み重ねが、この離職率にあらわれていると考えています。
まとめ
当センターが目指しているのは、「たまたま優れた人が育つ組織」ではありません。「優れた心理師を、継続的に育てられる組織」です。
Resident→Fellow→SV訓練→指導心理師という流れの中で、育てられた人が次の世代を育てる。その「教育のつながり」を、私たちは大切に守り続けています。
教育委員会・外部専門家・指導心理師・学会活動・ケースレビュー・スーパービジョンが一つの教育システムとして統合されているからこそ、個人の才能や運に左右されない、再現性のある専門職育成が実現できるのです。
次世代の心理専門職を育て、その専門性を社会へ還元していくこと。それが当センターの使命です。
そして、安心して臨床と学びに集中していただくために、働く土台もしっかり整えています。心理職は正社員(常勤)として雇用し、安定した固定給に加え、賞与年2回・各種手当(資格手当・家賃手当・子ども手当・交通費手当など)・週休2日制・有給休暇といった待遇のもとで働ける環境です。「民間の心理センターは生活が不安定なのでは」というイメージとは異なり、生活の基盤を守りながら、腰を据えて専門性を育てていけます。研修費用も自腹ではなく、収入の心配で学びをあきらめることもありません。

