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「嫌いなのに気になる」のはなぜ?嫌悪感の正体と、妬み・怒りとの違い

「嫌いなのに気になる」のはなぜ?嫌悪感の正体と、妬み・怒りとの違い

職場で苦手な人がいる。顔を合わせるだけで気持ちがざわつく。できれば関わりたくない。それなのに、その人のSNSをつい開いてしまったり、何をしているかが妙に気になったりする。

「嫌いなはずなのに、なぜ気になるんだろう」。そう感じて戸惑ったことのある方は、実は少なくありません。

嫌悪感は本来、危険なものから身を守るために「避けよう」とする感情だといわれています。それなのに嫌なものに近づいてしまう。この矛盾が気になって、「自分はどこかおかしいのでは」と不安になることもあるかもしれません。

さらにやっかいなのは、「あの人が嫌い」と感じたとき、その正体がよくわからないことです。嫌悪感なのか、妬みなのか、怒りなのか。感情の正体がつかめないままだと、もやもやばかりが膨らんでいきます。

この記事では、嫌悪感の仕組みや、嫌なのに気になってしまう心理、そして妬みや怒りとの違いについてお伝えします。自分の感情を整理するためのヒントとして、読んでみてください。

嫌悪感とは何か。私たちを守っている「避けたい」の正体

人間に備わった6つの基本感情のひとつ

嫌悪感は、感情心理学の分野では「基本感情」のひとつとされています。アメリカの心理学者エクマンの研究により、文化や国が異なっても共通して表情に現れる感情として、喜び・怒り・悲しみ・恐れ・驚き・嫌悪の6つがあることが示されました※1。

もともと嫌悪感は、腐った食べ物や有害なものを口にしないよう体を守る防御反応として発達してきたと、アメリカの心理学者ロジンらの研究で明らかにされています※2。顔をしかめたり身を引いたりするのは、体が危険を遠ざけようとしている反応です。

「生理的に無理」の裏側にある心理

ロジンらの研究によれば、嫌悪感はもともと味覚に関する拒否反応として始まり、やがて対人関係や道徳的な判断へと範囲が広がっていくことが整理されています※2。たとえば、不衛生なものへの嫌悪から、ルールに反する行為への嫌悪、人としてのあり方に対する嫌悪へと、段階的に広がっていくのです。

また、嫌悪感と不安症(不安障害)の関連についても研究が進んでおり、嫌悪感が発症や維持に関わっている可能性が指摘されています※2。嫌悪感は単なる「好き嫌い」にとどまらず、心の健康にも影響を及ぼしうる感情なのです。

職場で「あの人がなんとなく苦手だな」と感じるのも、こうした嫌悪感の仕組みが関わっている場合があります。まず知っていただきたいのは、嫌悪感を抱くこと自体は自然な反応であり、そう感じる自分を責める必要はないということです。

「嫌いなのに気になる」のはなぜ?接近行動の不思議

避けたいのに目が離せない、そんな体験に覚えはありませんか

嫌悪感は本来「避けよう」とする感情ですが、日常では嫌だと感じるものにかえって引き寄せられることがあります。

たとえば、こんな経験はないでしょうか。苦手な同僚のSNSをつい見てしまう。嫌なニュースだとわかっているのに繰り返し記事を開いてしまう。苦手な人が何をしているか、なぜか気になって目で追ってしまう。

こうした「嫌なのに近づいてしまう行動」を、心理学では「接近行動」と呼ぶことがあります。避けたいはずなのに、気になって意識が向いてしまう状態のことです。

「怖いもの見たさ」の裏にある3つの心理

「嫌いなのに気になる」という現象は、感情と行動の関係を扱う研究でも注目されています。ロジンらの嫌悪感研究をまとめた学術論文では、嫌悪を感じる対象に対してもあえて接近しようとする傾向があることが整理されています※2。

では、なぜこうした行動が起きるのでしょうか。研究から読み取れる背景として、いくつかの考え方があります。

1つめは、「安全を確かめたい」という気持ちです。「自分にとって本当に危険なのか」を確認したくて、つい近づいてしまうことがあると考えられています。嫌いな上司の今日の機嫌をそっと確認してしまうのも、この心理に近いかもしれません。

2つめは、「状況をつかんでおきたい」という気持ちです。苦手な人について調べてしまうのは、「不意打ちを避けたい」「状況を把握しておきたい」という思いの表れである場合があります。

3つめは、「頭の中で繰り返してしまう」という心理です。嫌な出来事や苦手な人のことが何度も頭をよぎると、その対象への注意が強まり、結果として目で追ったり調べたりしてしまうことがあります。こうした繰り返し考えてしまう状態は、心理学では「反すう」と呼ばれています。

大切なのは、こうした行動をとる自分を「意志が弱いから」と責める必要はないということです。接近行動は人間の心に備わった仕組みのひとつであり、多くの人に見られる自然な反応です。気になって近づいてしまうこと自体が問題というよりも、そのあとに自分を責めたり、逆に苦手なものを徹底的に避けようとしたりすることで、かえってストレスが大きくなる場合があります。

その「嫌い」は嫌悪感?妬み?怒り?3つの感情の見分け方

嫌悪感は「距離を取りたい」

嫌悪感の根底にあるのは、「その対象から離れたい」「関わりたくない」という気持ちです。顔をしかめたり思わず身を引いたりする反応が伴うことがあります※1。「なんとなく受け付けない」「理由はうまく言えないけれど苦手」といった感覚に近いのが嫌悪感の特徴です。

妬みは「自分にないものへの痛み」

妬みは、自分と近い立場の相手が自分にないものを持っているときに感じやすい感情です。同期が先に昇進した、友人が充実した生活を送っているように見える。そんなとき「自分だけ取り残されたような気がする」といった気持ちが浮かぶことがあるかもしれません。

嫌悪感との違いは、妬みの奥に「自分もそうなりたかった」という気持ちが隠れている場合がある点です。嫌悪感が相手を遠ざけたいのに対して、妬みは自分の現状への不満とつながっていることが多いとされています。

怒りは「不当な扱いへの反発」

怒りは、自分が大切にしているものが脅かされたと感じたときに生じやすい感情です※1。理不尽な要求をされた、約束を破られた。こうした場面で「それはおかしい」と反応するのが怒りです。

嫌悪感との違いとして、怒りには「状況を変えたい」というエネルギーが伴いやすい点があります。嫌悪感は「離れたい」方向に向かうのに対して、怒りは「相手や状況に働きかけたい」方向に向かいやすいといわれています。

感情は混ざり合うこともある

日常の中では、ひとつの感情だけがはっきり現れることはあまり多くありません。「あの人が嫌い」の中に、嫌悪感と妬みと怒りが入り混じっていることも珍しくないのです。

たとえば、職場で高圧的な上司に対して、「なんとなく受け付けない」(嫌悪感)、「あの人ばかり周囲に認められている」(妬み)、「あの態度は理不尽だ」(怒り)が同時に存在することがあります。

こうしたとき、無理にひとつの感情に絞る必要はありません。「今の自分はどんな気持ちだろう?」と穏やかに問いかけてみることが、感情を整理する第一歩になるかもしれません。

嫌悪感や接近行動に振り回されないための向き合い方

まずは「気づく」ことから始めてみましょう

嫌悪感や接近行動に振り回されていると感じたとき、最初に試してみていただきたいのは、自分の感情や行動に「気づく」ことです。

認知行動療法の考え方では、ある出来事に対して「どんな状況で」「どんな考えが浮かび」「どんな気持ちになったか」を振り返ることを大切にしています※3。嫌悪感の場合は特に、「なぜこの人が苦手なのか」「本当に嫌悪感なのか、それとも妬みや怒りが混ざっていないか」といった視点で振り返ってみると、自分の感情の輪郭が見えやすくなることがあります。

この振り返りは、ノートやメモに簡単に書き出してみると整理しやすくなることがあります。無理のない範囲で、少しずつ取り組んでみてはいかがでしょうか。

また、考え方を振り返るだけでなく、ふだん避けていることに少しだけ取り組んでみるのもひとつの方法です。苦手な場面をすべて避けるのではなく、できそうな範囲でそっと踏み出してみる。そうした小さな行動の変化が、「思ったほど怖くなかった」という新しい実感につながることがあります。認知行動療法では、こうした考え方と行動の両面からアプローチしていくことを大切にしています※3。

ひとりで抱え込まず、専門家に相談するという選択肢も

感情の整理や行動パターンの見直しは、ひとりで進めるのが難しいと感じる方も少なくありません。嫌悪感や接近行動が日々の生活に影響を与えていると感じる場合は、心理師やカウンセラーに相談してみることもひとつの方法です。

当センターでは、公認心理師による認知行動療法を中心としたカウンセリングを行っています。考え方のクセや行動のパターンに気づき、より柔軟な対処法を身につけていくための心理療法です。感情の整理や対人関係のストレスでお困りの方は、お気軽にご相談ください。初回カウンセリングは無料で受けていただけます。

まとめ

嫌悪感は、心と体を守るために備わった自然な感情のひとつです。そして「嫌いなのに気になる」という接近行動も、嫌悪感についての学術研究の中で多くの人に見られる反応として報告されています※2。

妬みや怒りと嫌悪感は似ているようで、それぞれ異なるメッセージを含んでいます。自分の感情に名前をつけてみることは、自分を理解するうえで大切な一歩になるかもしれません。

嫌悪感や接近行動で日々のストレスが増していると感じたら、ひとりで抱え込まず、専門家に相談してみてください。当センターでは、あなたのペースに合わせたカウンセリングをご提供しています。

引用元・参考文献

  1. 日本人の表情がエクマンの理論とは異なることを実証 ―世界で初めて日本人の基本6感情の表情を報告―|京都大学
    https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2019-02-14-1
  2. 今田純雄(2019)「嫌悪感情の機能と役割 Paul Rozinの研究を中心に」エモーション・スタディーズ, 4(Si), 39-46.|日本感情心理学会(J-STAGE)
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/ems/4/Si/4_ES4S006/_article/-char/ja/
  3. うつ病の認知療法・認知行動療法マニュアル(治療者用)|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/01.pdf

監修者

原井 宏明

原井クリニック院長 / ここケアセンター 顧問医

医師、精神保健指定医、精神科専門医・指導医(日本精神神経学会認定)、専門行動療法士(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法師(日本認知・行動療法学会認定)、認知行動療法スーパーバイザー、認定動機づけ面接トレーナー(MINT認定)

プロフィール
原井クリニックHP


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