Columnコラム

休職中に「仕事を辞めたい」と思っても、いま決断する必要はないかもしれない

休職中に「仕事を辞めたい」と思っても、いま決断する必要はないかもしれない

「休んでいるあいだに、もうこのまま辞めてしまいたい」

休職中にそう感じたことはありませんか。毎日何もできないもどかしさ、先の見えない不安、「こんな自分が戻れるのだろうか」という迷い——いくつもの思いが重なると、「もういっそ辞めてしまおう」という気持ちが浮かんでくることがあります。そして、その気持ちを誰にも言えずに、ひとりで抱えているという方も多いのではないでしょうか。

ただ、少し立ち止まって考えてほしいことがあります。その決断、いましなければならないのでしょうか。

休職中は、意思決定がとくに難しくなる時期

うつ病や適応反応症(適応障害)などで休職している期間は、気力や判断力が低下していることが多いです。研究では、うつ状態にある人は前頭前野という判断をつかさどる脳の領域が働きにくくなることが示されており、情報を整理したり選択肢を比較したりする力が普段より弱まりやすい状態にあります※2。

つまり、「辞めるか続けるか」という大きな決断を、もっともしにくい時期に迫られているとも言えるのです。

「休職中に判断してはいけない」とまでは言えませんが、少なくとも「いまの気持ちだけで結論を急ぐ必要はない」ということは、頭の片隅に置いておいてほしいのです。

「辞めたい」という気持ちが教えてくれること

「辞めたい」という感情は、否定するものでも、すぐ行動するものでもありません。それは、いまの状況に何らかの問題があることを知らせてくれているサインとして受け取ることができます。

大切なのは、その気持ちの中身を少しほぐしてみることです。例えばこういう観点で整理することができます。

「辞めたい」のは、いまの職場が合わないからなのか。それとも、働くこと全体が今は怖くなっているからなのか。人間関係なのか、仕事内容なのか、それとも自分への自信のなさなのか。

こうして整理していくと、「職場を変えれば解決しそうなこと」と「環境を変えても持ち越してしまいそうなこと」が見えてきます。前者は転職や部署異動で改善できるかもしれませんが、後者は職場が変わっても同じ苦しさが繰り返される可能性があります。

この見極めこそが、「辞めるかどうか」よりも先に考えておきたいことなのです。

焦って動くと、同じことが繰り返されやすい理由

「一度職場を離れたら、次こそうまくやろう」と思っていても、なぜ同じような状況になってしまうのか——そう悩んでいる方は少なくありません。

理由のひとつとして、休職に至った背景を十分に振り返らないまま次のステップに進んでしまうことが挙げられます。障害者職業総合センターの研究によると、気分障害で離職後に安定して就労を続けられた方には、「リワークなどの支援サービスを活用している」「生活リズムが整っている」「ストレスへの対処力が高い」といった共通の特徴が見られたとされています※3。

注目したいのは、「なぜそうなりやすいか」という自分の傾向への理解です。たとえば、「頼まれると断れない」「ミスをしたときに長く引きずる」「複数のことが重なるとパニックになりやすい」——そうした自分なりのパターンを知らないまま環境だけを変えても、似たような状況が生じやすくなることがあります。

この「繰り返し」は、本人の努力不足のせいではなく、自分の特性やストレスパターンへの理解が十分でなかったために起こることが多いと考えられています。

逆に言えば、休職中というこの時期は、自分のパターンをじっくり振り返ることができる、貴重な機会でもあります。次の一歩を考える前に、まずここに時間をかけることが、長期的な安定につながりやすいのです。

休職中だからこそできる「準備」がある

「何もできていない」と感じながら休職期間を過ごしている方もいるかもしれませんが、この時期にしかできない準備があります。

ひとつは、自己理解を深めることです。「どんな状況でつらくなりやすいか」「どんな環境なら力を発揮しやすいか」「自分が本当に大切にしたいことは何か」を、焦らず整理していく時間です。これは、転職先を探すよりも先に取り組む価値があります。

もうひとつは、ストレスへの対処パターンを見直すことです。「辞めたい」と感じるほど追い詰められた背景には、仕事上のストレスへの向き合い方が影響していることも少なくありません。たとえば、「完璧にやり遂げなければ」という考え方が強い場合、それは努力の源でもありながら、自分を追い込む要因にもなりえます。こうした思考のパターンに気づき、少し柔軟にしていくことで、次の職場での体験が変わってくることがあります。

「辞める・続ける」より先に整理したいこと

最後に、「辞めるかどうか」を考える前に整理しておきたいことをお伝えします。

まず、「いまの自分の状態」と「職場の問題」を切り分けることです。心身が消耗しているときは、どんな環境も過剰につらく見えることがあります。いまの判断が、体調が回復してからの判断と同じかどうか、立ち止まって考えてみてください。

次に、「辞めた後の具体的なイメージ」を持てているかどうかです。焦りや苦しさから離れたいという気持ちはとても自然ですが、「辞めたい」が「ここから逃れたい」という感覚に近い場合は、少し時間を置いてみることも選択肢になります。

そして、「一人で判断しようとしていないか」という点です。主治医、心理師、家族など、信頼できる人と状況を共有しながら考えることで、見えていなかった選択肢が見えてくることがあります。

「辞める」も「続ける」も、どちらも正解になりえます。大切なのは、いまの苦しさだけを出口にするのではなく、自分に合った先を見据えた上で決断することです。その整理を、私たちと一緒にしてみませんか。初回カウンセリングは無料でお受けしています。

引用元・参考文献

  1. 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き|厚生労働省
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055195_00005.html
  2. うつ病と意思決定障害:システマティックレビュー|Journal of Affective Disorders
    https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165032712007798
  3. 気分障害を有する者への雇用促進・雇用継続支援技法に関する研究|障害者職業総合センター
    https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/houkoku111.html
  4. リワークプログラムとは|日本うつ病リワーク協会
    https://utsu-rework.org/rework/

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