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うつとメタ認知はどのように関連するのか

うつとメタ認知はどのように関連するのか

うつになると、考えごとが頭から離れなくなったり、同じことを何度も思い返してしまったりすることがあります。気分が沈んでいる理由を探し続けたり、過去の出来事を繰り返し振り返ったりするうちに、思考そのものに疲れてしまうことも少なくありません。

このような状態を理解する手がかりのひとつが「メタ認知」という概念です。

メタ認知とは、自分の考えや感じ方を一歩引いた位置から捉える働きを指します。「今、自分はこう考えている」「この考え方には偏りがあるかもしれない」と気づく力と言い換えることもできます。普段は無意識に働いているこの機能ですが、うつ病の状態ではバランスが崩れやすくなります。

うつでは、否定的な考えが自動的に浮かびやすくなります。

「自分は役に立たない」「この先も状況は変わらない」といった思考が繰り返される一方で、それを客観的に見直すことが難しくなります。その結果、考えと事実を切り分けることができず、思考の内容がそのまま現実であるかのように感じられてしまいます。これは、メタ認知的な距離が取りにくくなっている状態と考えられます。

さらに、うつでは思考に対する評価の仕方にも特徴が見られます。

「こんなことを考える自分はおかしい」「ネガティブに考えてしまうのは弱さだ」といった形で、自分の思考そのものを問題視してしまうことがあります。このような捉え方は、考えを抑え込もうとする方向に働きやすく、結果として反すう思考が強まることもあります。

一方で、メタ認知が過剰に働く場合もあります。

自分の内面に意識が向きすぎることで、気分の変化や考えの内容を過度に監視してしまい、「また落ち込んでいる」「この考えは良くないのではないか」と注意が集中し続ける状態です。これもまた、うつを長引かせる要因になり得ます。

認知行動療法では、こうしたメタ認知の偏りに注目します。

考えを変えようと無理に修正するのではなく、「考えが浮かんでいることに気づく」「考えと距離を取る」といった関わり方を重視します。考えはあくまで心に浮かぶ反応のひとつであり、必ずしも行動や価値判断に直結させる必要はない、という視点を育てていきます。

うつの回復過程では、気分そのものだけでなく、思考との付き合い方が少しずつ変化していくことが多くあります。考えが浮かんでも、それに巻き込まれすぎず、「今はこう考えている状態だ」と捉えられるようになると、精神的な負担は軽減しやすくなります。

考えが止まらない、頭の中で自分を責め続けてしまうと感じる場合、それは性格の問題ではなく、うつに伴う考え方の変化かもしれません。

必要なときは専門家に相談することも選択肢のひとつとなるでしょう。思考との距離の取り方を一緒に整理していくことで、日常生活のしんどさが和らぐことがあります。焦らず、自分のペースで向き合っていきましょう。


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