はじめに
職場での人間関係に悩まれたことはありませんか。上司との関わり方、同僚とのコミュニケーション、価値観の違いなど、人間関係のストレスは多くの方が抱える課題です。
厚生労働省の令和5年の調査によると、仕事や職業生活で強いストレスを感じている労働者は82.7%にのぼり、そのうち約3割の方が対人関係をストレスの原因として挙げています。さらに、退職理由として人間関係の問題を挙げる方は男性で9.1%、女性で13.0%にも達しているのです。
※令和5年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r05-46-50b.html
※令和5年 雇用動向調査結果の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/index.html
こうした数字からも、職場の人間関係ストレスは決して珍しいものではありません。むしろ、多くの方が同じように悩んでいる普遍的な課題だといえるでしょう。
この記事では、職場の人間関係ストレスの原因を整理し、具体的な対処法をお伝えします。一人で抱え込まず、できることから少しずつ取り組んでいきましょう。
なぜ職場の人間関係はストレスになるのか
職場での人間関係がなぜストレスになるのか、その背景には様々な要因があります。まずは、どのような状況がストレスを生み出しやすいのか見ていきましょう。
上司や同僚との関係性において、特にストレスを感じやすいのが上下関係です。評価者と被評価者という立場の違いもあり、上司との関係は働きやすさに大きく影響します。指示の仕方や期待値の伝え方、フィードバックの方法などが合わないと感じると、日々の業務に不安や緊張が伴うようになります。
また、同僚間の関係も見過ごせません。競争が激しい職場では、協力し合う雰囲気が薄れ、孤立感を抱きやすくなります。本来なら支え合えるはずの同僚との関係がギクシャクすると、職場での居場所を失ったように感じてしまうこともあるでしょう。
コミュニケーション不足も大きな要因です。業務上の最低限の会話しかない職場では、お互いの考えや状況が見えにくくなり、誤解やすれ違いが生じやすくなります。対面での会話が減り、メールやチャットでのやり取りが中心になると、ニュアンスが伝わりにくく、相手の意図を誤って受け取ってしまうこともあります。
価値観や仕事の進め方の違いも、ストレスの原因となります。几帳面な人とおおらかな人、計画的に進めたい人と柔軟に対応したい人など、それぞれのスタイルが異なると、一緒に仕事をする中で摩擦が生じることがあります。
心と体が教えてくれるストレスのサイン
人間関係のストレスは、心と体に様々なサインとして現れます。早めに気づくことができれば、深刻化する前に対処することができます。
体に現れるサインとしては、頭痛、胃の不調、肩こり、食欲の変化、睡眠の質の低下などがあります。朝起きたときに体が重い、出勤前になると体調が悪くなる、といった症状が続く場合は要注意です。
心の面では、気分の落ち込み、不安感、イライラ、集中力の低下などが見られます。些細なことが気になって仕方がない、仕事に対する意欲が湧かない、ミスが増えたと感じるといった変化は、ストレスのサインかもしれません。
行動面でも変化が現れることがあります。遅刻や欠勤が増える、休憩時間に一人でいることが多くなる、仕事以外の時間も職場のことが頭から離れない、といった状態が続いているなら、ストレスが溜まっている可能性があります。
厚生労働省が提供している「5分でできる職場のストレスセルフチェック」などを活用して、定期的に自分の状態を確認することも大切です。自分では気づきにくいストレスのサインを、客観的に把握する手がかりになります。
今日からできる4つの対処法
ストレスに気づいたら、具体的にどのように対処していけばよいのでしょうか。ここでは、実践しやすい方法をいくつかご紹介します。
まずは「考え方のクセ」を知ることから
人間関係のストレスを感じたとき、まず注目したいのが「自分の考え方」です。同じ出来事でも、人によって受け取り方は大きく異なります。
例えば、上司から「この資料、もう少し工夫できないかな」と言われたとします。このとき、「自分は能力が足りないダメな人間だ」と考えるか、「改善のヒントをもらえた」と考えるかで、感じるストレスは大きく変わってきます。
認知行動療法という心理療法では、こうした「瞬間的に浮かぶ考え」を「自動思考」と呼びます。強いストレスを感じているとき、私たちの自動思考は極端になりがちです。「いつも失敗する」「誰も理解してくれない」「この先ずっとこのままだ」といった、現実よりも悲観的な考えが浮かびやすくなるのです。
大切なのは、こうした考えが浮かんだときに、一度立ち止まって「本当にそうだろうか」と問いかけてみることです。事実と自分の解釈を分けて考えてみましょう。上司の言葉は「改善の余地がある」という指摘であり、「あなたはダメな人間だ」という評価ではないかもしれません。
伝え方を変えると関係も変わる
人間関係を改善するには、コミュニケーションの取り方を見直すことも効果的です。
まず意識したいのは、相手の立場や状況を想像してみることです。忙しそうにしている同僚が素っ気ない態度を取ったとき、「自分が嫌われている」と考えるのではなく、「今は余裕がないのかもしれない」と考えてみる。そうすることで、相手の行動を個人的に受け取らず、冷静に対応できるようになります。
また、自分の気持ちを適切に伝えることも大切です。不満や要望を我慢し続けると、いつか爆発してしまったり、相手に伝わらないまま関係が悪化したりすることがあります。「〜してほしい」「〜だと助かる」といった具体的な表現で、穏やかに伝える練習をしてみましょう。
対面でのコミュニケーションを増やすことも、関係改善に役立ちます。メールやチャットだけでは伝わりにくいニュアンスも、直接話すことで理解し合えることがあります。
ストレスに負けない心と体をつくる
ストレスに強い心身を保つには、基本的な生活習慣を整えることが欠かせません。
十分な睡眠は、ストレス対処において最も重要な要素の一つです。個人差はありますが、6〜8時間程度の睡眠時間を確保できるよう心がけましょう。質の高い睡眠は、心身の回復を促し、ストレスへの耐性を高めてくれます。
適度な運動も効果的です。ウォーキングやストレッチなど、無理のない範囲で体を動かすことで、気分転換になるだけでなく、ストレスホルモンの軽減にもつながります。
リラクセーション法を取り入れるのもおすすめです。深呼吸や軽いストレッチなど、簡単にできる方法から始めてみましょう。寝る前に数分間、ゆっくりと呼吸を整えるだけでも、心身の緊張をほぐす効果があります。
環境を変えることも前向きな選択
自分なりの工夫をしても状況が改善しない場合は、環境を変えることも選択肢の一つです。
社内で相談できる窓口があれば、人事部や産業医、カウンセラーなどに相談してみましょう。部署異動や配置転換で、人間関係の悩みが軽減されることもあります。
ハラスメントが疑われる場合は、我慢せずに適切な窓口に相談することが大切です。一人で抱え込まず、記録を残しながら、しかるべき対応を求めていきましょう。
どうしても改善が見込めない環境であれば、転職を視野に入れることも前向きな選択です。心身の健康を守ることが何より大切であり、自分に合った職場を探すことは、決して逃げではありません。
一人で悩まないで。専門家のサポートという選択肢
ストレス対処のための工夫をしても、なかなか状況が改善しない、あるいは心身の不調が続いている場合は、専門家のサポートを受けることを検討してみてください。
カウンセリングでは、心理師があなたの話に耳を傾け、一緒に問題の整理や対処法を考えていきます。認知行動療法をはじめとする科学的根拠のあるアプローチを通じて、ストレスへの向き合い方を学ぶことができます。
私たちここケアセンターでは、公認心理師による認知行動療法を中心とした心理支援を行っています。職場の人間関係に悩む方、復職や再就職を目指す方など、一人ひとりの状況に合わせたサポートを提供しています。
初回のカウンセリングは無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。一人で悩みを抱え込む必要はありません。専門家と一緒に、あなたに合った対処法を見つけていきましょう。
まとめ
職場の人間関係ストレスは、多くの方が経験する普遍的な悩みです。ストレスのサインに早めに気づき、考え方のクセを見直したり、コミュニケーションを工夫したり、生活習慣を整えたりすることで、負担を軽減できることがあります。
大切なのは、自分一人で抱え込まないことです。信頼できる人に相談したり、必要に応じて専門家のサポートを受けたりしながら、少しずつ前に進んでいきましょう。
あなたの心身の健康が何より大切です。無理をせず、できることから取り組んでいってくださいね。
引用元・参考文献
- 領域2 人間関係|こころの耳 働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
https://kokoro.mhlw.go.jp/comfort-check/cc002/ - 令和5年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r05-46-50b.html - 令和5年 雇用動向調査結果の概要|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/24-2/index.html - 5分でできる職場のストレスセルフチェック|こころの耳
https://kokoro.mhlw.go.jp/check/ - うつ病の認知療法・認知行動療法(患者さんのための資料)|厚生労働省(PDF)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/kokoro/dl/04.pdf - 認知行動療法(CBT)とは|認知行動療法センター
https://cbt.ncnp.go.jp/contents/about.php


